イギリスでは学部最終学年! サウサンプトン大学の宇宙航空工学3年生で学んでること

こんにちは、わたぽんです。

イギリスの大学に来てからこっそり毎年書いている、「その年に受ける大学講義のまとめ」。ついに3年生、学部最終学年の分を書くときが来ました。過去の分はこちら。:

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サウサンプトン大学の宇宙航空工学科では、2年生までは全科目必修。それが3年生になると、選択科目が現れてきます。自由に選べるやつ。これを4月か5月あたりに選んだのですが、選択肢が多くて選ぶの大変でした。面白そうなものたくさんある。それらを必修単位と組み合わせて、3年生の時間割が構成されます。

悩みに悩んで、F1チームにいるサウサンプトン大学卒業生の人なんかにも相談して決まったモジュール選択。それが:

前期———-

  • Aerospace Control Design
  • Aerothermodynamics
  • Experimental Methods for Aerodynamics

後期———-

  • Aircraft Structural Design
  • Introduction to Aircraft Design
  • Wing Aerodynamics

そして通年で:

  • Individual Project (IP)

太字のものが、選択した科目です。IPはテーマ設定を自分でした。

嬉しいのは、授業数が少ないこと。実験がある週でもスカスカ。しかも実験の数は、前期で合計3回だけ。余裕やーーん!て思ってたら、今週一週間、毎日深夜3時まで追い詰められていました。あれれ。

ではでは、前期と通年で取るモジュールについて、紹介していきます。後期の分はまだ受けてないので今回は(例年通り)省略。

 

Aerospace Control Design

僕のいる宇宙航空工学科では、3年生で全員必修の科目。”Control design”となっているだけあり、設計するのは外見ではありません。中身です。

飛行機やロケットには、様々なシステムが搭載されています。例えば飛行機に乗った時に翼を見てみると、離陸時や着陸時にウィーーーンと動いていたりします。あるいはパイロットが舵を切ると、飛行機は反応良く、緩やかに曲がっていきます。

その裏にあるのが、システムコントロール。まあ、色んなシステム部品をつなぎ合わせて、扱いやすくて安定した動きを実現しましょーというのが目的。これができないと、例えば風に吹かれるたびに、飛行機の挙動が不安定になってしまったりする。

正直、あまり好きではないなーと思ってました。
選べるなら、Application of CFDみたいなモジュール取りたかった。

でもその想いは、1週間で消え去りました。担当教授がどことなく面白いんです。

 

話し方はゆっくりで、発音もキッパリとする純英国人気質。パブと天気をネタとする、クラシックなタイプです。

過去にはロールスロイスで飛行機エンジンのシステム設計に関わっていたり、初めて買った車を直後にクラッシュしてしまったりと、色々してる。最近は医療系に関わってるとのこと。宇宙航空工学系のシステム設計についての授業のはずですが、話してることはRadio 4の番組トークから大学での鬱と自殺の関係についてまで、多岐に渡る。

思い出せば、学校で好きだった先生って、一見授業にあまり関係なさそうな雑談をいっぱいしてくれる人やったなーと。この人もきっと良い教授なんや。

 

Aerothermodynamics

もう一つの必修科目が、Aerothermodynamics。日本語で言うと、熱空力学…かな? どうも造語のようで、熱力学と空気力学、くっつけちゃったみたいです。

講義で主に扱ってるのが、音速を超える世界について。

普段の生活で速さについて話すと、「時速140キロで高速道路走ったぜ」「ねぇ、秒速5センチなんだって。」みたいな使い方をします。ですが、音速付近になると、これが速さの単位はマッハで表されます。「マッハ1 = 音速」。ちなみに音速はだいたい340m/sぐらい。ちなみにF1マシンの過去最高速が約100m/sほど。ウサイン・ボルト選手の速さは12.27m/sらしい。

 

なんでこれが重要かって言うと、マッハ1になると衝撃波と呼ばれるものが、突如出現します。”Shock wave”って英語では言う。この衝撃波のせいで、空気の性質も熱も変化してしまう。戦闘機やロケットの設計に大きな影響を与える現象です。

実際にこれを設計で考えるとかなり難しいです。が、講義で扱うのは単純化され公式でも表せるようなものばかり。めちゃくちゃ難しくはない。計算が面倒な部分は、一覧表が作られていて、自分で計算する必要もなかったりする。

教授陣は話すのが早い以外は特に言うこともない…思ってたけど、書いてて思い出した。担当教授の内の一人が、めっちゃ字汚いんでした。

例えばこれ、とある日の講義の写真です。

なんだか”r”がいっぱいあるなーって、ぼーっとしてたら思います。が、この板書の中に”r”なんて一つもない。教授が「Pだ!!」と自信を持って書いても、どこからどう見ても”r”にしか見えない…なんてことが多々あります。僕だけかなと思ってたら、イギリス人も板書が始まる度に無言で頭抱えてたりして、ちょっと笑った。

今日も平和なサウサンプトンです。

 

Experimental Methods for Aerodynamics

選択科目で取ったのが、「空気力学での実験方法」について。

僕がこのモジュールを取った理由は、実験が苦手だから。大学の内に実験の方法論をしっかり学んでおきたかった

 

主に扱うのは、風洞という実験施設。簡単に言ったら風のトンネル。英語でもそのまま、Wind tunnelと呼ばれます。トンネルの中に物を置いて、そこに空気を流すことによって、物体にかかる力や空気の流れを測ることができる実験施設。

その簡易版を使って、実験にはらむあらゆる不都合な真実を経験し、学ぼうというのが、この単位の目的。おかげで、不都合な真実に振り回されています。

最初の実験日。
「なんとなくやること分かるや」と準備も適当に実験室へ行くと、説明の用紙も冊子も、何も用意されていない。具体的に何するか、事前に具体的な説明もされた覚えはない。

代わりにあるのは、解体された実験器具。

「〇〇と○○を今日は測りたいんや。□□使ったらできるやろ?」

それだけ言い残すと、そして教室前方にでかでかとデジタル時計が出現。カウントダウンスタート。残されたのは、ぽけーっとする生徒数人と、解体された実験器具。自分達で器具の組み立てからしなきゃいけないみたい。ていうか、その器具のありとあらゆる寸法を測るところから始めなきゃいけなかった。

 

実験のことについて知ってるようで、いざ「やりな」と言われると、何をどの順番でどうすればいいのか、すぐには見えてこない。

その内に時間は過ぎていく。

「まだそれ測ってるのか」なんて教授は言ってくる。

「そもそも何測ったら良いのか、これで測り方合ってるのか、確証がない」と生徒は心の中で思う。

そんなこんなでその場しのぎで実験をするから、どのグループもたいてい、何か一つ測り忘れている。それでも実験レポートを書いて、提出しなければいけない。ああ、無情。

 

よく考えたら、これは4年生、つまり大学院生向けのモジュール。教授も「3年生には難しすぎたみたいや。来年からは院生だけに開くことにする」って話してた。でもだからこそ、このモジュールを取る価値があるのだと思います。毎回必死で考えて準備して、その後にレポート書いてというのを繰り返す。だから、とても学びの深いものになっています。

それに、間違うことを良しとしてくれるので、その点でも学びが大きいです。実験方法を細かく指示しないのも、各ステップを自分で考えてやることが、後に自分一人で実験する時に役に立つ、という教授の想いから。

 

あとラッキーなのは、担当教授がオランダ人だからか、レポートの英語の出来で減点されないことかな。笑

 

Individual Project

最後に、通年で取ってる単位について。個人研究です。

個人研究では、渦についてやってます。タイトルは、”Vortex Burst Influences and Performances in Ground Effect“。

授業数が少ないのは、個人研究に費やす時間を与えるため。だから授業数が少ないからと、一概にヒマになったとは言えない。

 

自分で全て研究を進めるのですが、担当してくれている教授が、上記のExperimental Methods for Aerodynamicsの担当教授。毎回話す度に、”Why? Why? So why? Then what?…”と聞いてくる。いやはや、これこそが研究というものです。

物事について考えるとき、まずは「なんで?」と「何が?」から始まります。その先に、じゃあどうやって?という、”How”がやって来ます。

でも実際の生活では”How?”が先行して、”Why?”や”What?”がおざなりにされてしまうのがこの世界では多くみられる。その本質的でない考え方を、根こそぎほじくられる感覚です。

 

研究ではFormula StudentやF1でやってたことを活かして、より難易度が高いことに挑戦しています。難しいけど、考えるのは楽しい。それになんて言ったって、自分で自分の好きなように考え、研究を進めることができる。これって結構楽しい。やっぱり言われたことをやる授業とは全然違います。

 

わたぽんのまとめ的なにか

以上、ざーっとですが3年生のモジュールについて書いてみました。正直言うと、これだけだと夜の3時まで起きて課題することなんてないはずなんですよね。まあブログやったりもしてるからかな。忙しいふりしてすいません。

大学で空気力学を学んでいて思うのは、学年が上がるにつれて、内容がどんどん面白くなっていること。以前はそれこそ、基礎的なことばかりだったけれど、その上にやっと応用的な内容が増えてきたって感じ。講義でもレースカーや飛行機がよく出現します。楽しい。

あと半年ほど残ってますが、楽しんで満喫したいと思います!

以上、わたぽんでした。ほなね!



わたぽんの簡単な自己紹介

わたぽん(@wataponf1_uk)
高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻中。未熟で失敗ばかりするも、その度に這い上がってきた。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでのインターンも獲得。自分と未来を信じて、夢は叶えられると証明したい。詳しいプロフィールはこちら

ブログ「わたぽんWorld」について

僕、わたぽんの「F1のエンジニアになる」という夢を叶える道を綴るブログ。2014年に運営開始。夢に近づけば近づくほど、更新頻度が減っていきます。
テーマは夢とイギリス留学。僕の生き方が励みになると言っていただくことが増えてきて、とても嬉しいです!

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プロフィール

わたぽん(@wataponf1_uk)

高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでの1年インターンも獲得。現在は卒業し、日本でF1から離れ生活中。 詳しいプロフィールはこちら


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