【実録】イギリスで2度目に盗まれた物がロードバイクだったって話

こんにちは、イギリスで大学生してるわたぽんです。

海外へ行く際に毎回のように口酸っぱく言われるのが、盗難についてです。いわば常識とも言える、海外での盗難の多さ。イギリスでは殺人などの重大犯罪は少ないとは言え、盗難をはじめとした軽犯罪にはしっかり注意したいところ。持ってるものが高価だったり、思い入れのある物ならなおさらです。

考えてみてください。もし13万5000円のロードバイクが、まだお小遣いをもらっていた頃に初めてスポーツ自転車を買ったときに「これも!」と一緒に買ったサドルバッグや携帯空気入れ、パンク修理セット等と共に失われたときのことを。

絶対に避けたいですよね。

では、避けられなかった一人の男の話をどうぞ。(ちなみにイギリスで一つ目に盗まれた物はまな板です。寮でまな板が3枚、次々になくなるという、不可解な事件がありました。そして誰もまな板以外は盗まれていませんでした。笑)

 

事件は突然起こるもの

12月に入り、クリスマス休暇まであと一週間というところ。この”皆が課題を終わらせたか終わらせてないか微妙なタイミング”で、大学入学当初からの友達(B君)が、盛大な誕生日パーティーを行った。僕は課題を終わらせていたので、迷わず参加した。

パーティーには昨年度のコースメイト達も集まり、僕は久しぶりにわいわいとはしゃいだ。趣味でDJセットを買ったM君は流行の曲を流し、一眼レフを持っている僕は皆の写真を撮ってまわり、飲む奴はスコッチウィスキーを飲みつつ、誰がどれくらい酒を飲めるかを楽しそうに語っていた。誕生日要素は、限りなく少ない。

誕生日パーティーの後、場所を移して次は飲んで踊るぞとなったから、僕は午後11時頃に一度家に帰り、一眼レフを置いた。靴も”踏まれてもいい”ものに変え、バスで友達と落ち合った。家を出るときには、ハウスメイトもどこかへ出かける準備をしていた。家の前にはマウンテンバイクが置かれていた。

移った先はこれまたハウスパーティーなわけだが、家全体をクラブ化させてしまい、多分50人近くは収容されていた。

普段の僕は大学のLibraryに生息し、パーティーやクラブもその年はほとんど顔を出していなかった。久しぶりに行くと、あの爆音で流されるEDMが酒の回った頭に心地よく響くのだ。(決して酒飲みでもクラブ好きというわけでもないが。)そこで午前2時半頃まで楽しみ、僕は友達と一緒に帰宅することにした。

 

冬の夜を30分ほど歩けば、家に着く。深夜のケバブ屋、道端の酔っ払い、様々なトラップをかわし、僕は家にたどり着いた。ちなみにシェアハウスをしているので、文字通りの一軒家、ふつうの家だ。

家の正面にはドアが二つある。一つは家本体への入り口。もう一つは、裏にある庭へと続く扉だ。木製で、内からトイレの内ロックと同じ要領で、鍵を閉めることができる。外からは開けられない。隣の家も、裏の家も、だいたい同じ造りである。

その夜、”庭への扉が開いていた。

僕はあまり不思議に思わなかった。ハウスメイトも同じくどこかのパーティーへマウンテンバイクで出かけていたからだ。

マウンテンバイクは家の納屋にしまわれていて、その納屋への扉は、”庭への扉”と庭を結ぶ家の脇を通る細い路地にある。とにかく納屋があるのだ。納屋からマウンテンバイクを出していたのを僕は知っていたので、多分その時に”庭への扉”を開けっ放しにして行ったのだろう、と一人納得した。全く、酔っ払うと思考が短絡的になる。

僕はなんとか歯磨きを終わらせると、暖房の効かない自室でクラクラと共に少し凍えながらベッドへと潜り込んだ。楽しい夜だった。


次の日は日曜日。朝少し遅い時間に起きたのを除けば、普段と大差ない午前中だった。午前中はいつも通りLibraryで勉強し、昼過ぎのお腹が減ったころに、休憩がてら一度家に帰った。家に帰る途中で、チキンレッグ2つとレギュラーサイズのフライドポテトを2.5ポンドで買った。この値段でがっつり食べれれば、イギリスでは悪くない。いつも適当なサンドイッチを食べている僕にとって、スパイスの効いたチキンレッグは至福の一品。フライドポテトも大好きなので、思わず家に着く前に、歩きながら食べ始めてしまった。

家で残りを食べてしまい、僕はノートや教科書を入れ替えに一度部屋に戻ろうとした。そこへハウスメイトが帰ってきた。彼は一切の間をおかず、しかしどこかとぼけた顔で僕に聞いてきた。

ハウスメイト「Did you ride on your bike today?(今日チャリ乗ったん?)

何を言っているのだろう。僕はLibraryに歩いて行っていた。それに僕の愛すべきロードバイクは、しっかりと納屋に保管されている。曇り空に時々雨、今日はいつも通りのイギリスの日曜日だ。それともロードバイクに乗ってみたいのだろうか?

僕「No, I was in the library as always, you know?(いや、いつも通り図書室に行ってたけど?)
ハウスメイト「but your bike is not in the shed.(あれ、でもお前のチャリ、納屋になかったで。)

僕は愛想の良い笑顔の裏で、自分の聞いたことを疑った。僕は英語がそんなにできるわけでもない。ましてやそのハウスメイトも留学生なのでちょくちょく文法を間違えている。

僕「What do you mean?(ん?どーいう意味?)
ハウスメイト「it’s not there!(だからなかってんて!)

僕の思考回路が切り替わったのはここからだ。パチッという音がし、僕は目の色が変わった。すぐにキッチンを出て納屋へと向かう。扉を開ける。マウンテンバイクが一つ。その奥には白と黒の合間に綺麗に黄緑色のラインが入ったロードバイクが、ない。

12308555_947084828705233_2516111459007705153_n (1)

僕「What the f**k where is my bike gone?(まじかよ、俺のチャリどこ行ったん??)
ハウスメイト「I don’t know!(知らんよ。)
僕「Was it stolen????(盗まれた?)
ハウスメイト「…yeah probably(…うん、多分)

ハウスメイトの表情も緊迫感を増してくる。

事件は突然起こった。

僕はなぜかこういう時、自分で言うのもなんだが頭がよく回る。以前ロードバイクを確認したとき、保存場所、ハウスメイトの行動、時間、庭。様々なものが頭の中に流れ込み、通過していった。

僕「Did you lock the shed when you went out yesterday night?(昨日夜出るとき、納屋の鍵閉めた?)

僕はすぐに思い当たったことが一つある。それは納屋の鍵だ。鍵が閉められていれば、開けることはたとえ容易であっても、それなりに時間がかかることだ。よって、鍵があるだけでも盗みの対象となる確率は低くなる。しかしハウスメイトの答えは予想通りのものだった。

ハウスメイト「No. I didn’t lock it because you…(閉めてへんよ。だっていつも…)

僕は途中で遮った。分かっている。僕たちは納屋の鍵が一つしかないことを理由に、お互いの自転車を好きな時に取り出せなくなったらマズいということで、基本的に鍵は閉めていなかった。というか、する必要性が薄かった。なにしろ、納屋があるのは僕たちの家の敷地内だ。

ハウスメイト「Maybe they came into our garden from there because that wall is broken.(多分あの壁の壊れたとこから犯人は入ってきたんやろうな。)

庭に目をやると、”いつも通り”庭を取り囲む木製の薄い壁の一つが、倒されていた。倒された先は、隣の家の庭。つまり、その壊れている壁を通して、隣の家の庭へ簡単にアクセスできる。繋がった。僕は午前3時に開けっ放しにされていた”庭への扉”を思い出した。

 

もし本当にロードバイクが盗まれたとするなら、この方法が一番しっくりくる。盗みが実行されたのは、午後11時から午前3時の間。ハウスメイトがマウンテンバイクで出かけてから、僕が酔っ払いながら帰ってくるまでの間だ。犯人は庭の壊れた壁を通って僕たちの家の敷地内に入ってきた。そこから納屋へと簡単にたどり着き、鍵のかかっていない丸裸の納屋は、まんまと開けられた。犯人はロードバイクを手に取り、抱え、”庭への扉”を内側から開け、家の敷地外へと出た。”庭への扉”は内側からなら、簡単にロック解除できるようになっていたのだ。

僕のロードバイクはU字ロックで施錠されていた。が、”地球”にはロックされていなかった。自転車本体と、ホイールを固く結びつけていただけだ。きっと犯人は軽いロードバイクをロックごと抱え、持ち出したのだろう。持ち出したロードバイクは、どこかの闇マーケットへと渡った…。

多分、合っている。もちろんハウスメイトが関わっていなければの過程だが、僕はその可能性は除外する。まあ、除外しなくてもいいのだが、どろどろした展開は苦手だ。

だとすれば、ロードバイクを盗んだ犯人は、”僕がロードバイクを持っている”ことと、”ロードバイクの納屋に、鍵もかけられず置いてある”ことを知っていたはずだ。さもなければ、盗みを実行するには不安要素がいささか多すぎる。大家さん曰く、「盗みをする人はリスクを恐れる。明るい時間、手間のかかる鍵などはことごとく避ける。」と話していた。だから、ロードバイクが鍵のかけられていない場所に保管されていたことを知っていたとしても、大きく間違った推測ではない。

そして実際、納屋やロードバイクは、外から”観察”できる。

僕の推理では、この犯人は明らかに近所に住んでいる人、もしくはその近辺だ。

彼、もしくは彼女は近くの家の窓等からロードバイク、そして納屋の存在を把握し、この機会を待っていたと見られる。もしくは、近所の人から情報を得ていた。どうだろうか。

僕たちはとりあえず、近所を歩き回った。どこかの家に、もしかしたら僕のロードバイクが飾ってあるかもしれないと思ったからだ。もちろん、相手はそんなにバカではなかったようだが、一つのことに気づいた。隣の家の”庭への扉”は開いていた。犯人は外からでも、隣人の庭を経由して僕たちの庭へと侵入してくることが可能だったというわけだ。

とにかく、ロードバイクがどうも盗まれた、ということが分かった。僕はここで、平静を装った。そうだ、今日は”いつもの日曜日”だ。

ハウスメイトは部屋に戻る時に、アドバイスをくれた。「Anyway inform it to the police. They would help you finding your bike.

“find my bike?”何を呑気なことを言ってるのだろうか。こんなに計画的に盗まれたのだとしたら、返ってくるはずがない。しかし、警察に伝えておくことは、確かに悪いことではない。「はあ、英語で電話しなきゃいけんのか、それとも街まで出て警察署に行かなきゃならないのか…。」めんどくさがり屋の僕は、警察署の場所をググりながら、気を落とした。

 

日曜日に戻らなければいけない。
僕は気を取り直し、いつも通り、僕の生息地、Libraryへと戻った。勉強しようかと思ったが、とりあえず警察についてもう少し調べる必要があると思った。僕はイギリスの警察事情について、あまりにも無知だった。

イギリスの警察、さて、どのキーワードで調べればいいのか。とりあえず僕は呆然と、”police…”とGoogleの検索欄に打ち始めてみた。すると、”Police.uk”が最上位に出てきた。そのままではないか。Libraryの静寂の中、一人突っ込みをしてニヤニヤした。

“Police.uk”はイギリスの警察関係をまとめた総本山のサイトらしい。そこから僕の住んでいる街を元に、管轄の警察署を割り出すことは簡単にできた。管轄の警察署のウェブサイトへと飛び、窃盗にあったときの対処法を読んだ。

それによると、どうも警察署には直接赴かなくてもいいし、電話もかけなくていい、ということが分かった。代わりに、オンラインフォームを作成し、提出すればいいとのことだ。なんとも気が利いたシステムだ。

10分もすれば、システムを理解し、オンラインフォームを完成させ、送信した。すべては大学のLibraryで済まされた。あっけないほど簡潔、楽。その簡潔さによって失われた時間を取り戻すかのように、僕はFacebookやTwitterに盗まれた報告をした。僕はSNSをすぐに開いてしまう癖がある。コメント欄に寄せられた友達からの同情、アドバイス、俺もだ!との悲しい声を、僕はとろーんとした目で見ていた。そうだ、僕のロードバイクはもう既に僕の手にはなく、他の誰かに渡された…。

警察は至ってシンプルなメールを、僕に返してくれた。「連絡ありがとうございます。今の時点では何も分からないですが、似たような事件が起こったりすれば参考にさせてもらいます。」イギリスの警察は、わりかし心強いものだと、色々な人から聞いている。しかし警察もさすがに、一件の窃盗事件に深く関わろうというつもりはないようだ。

その日は勉強に集中できなかった。次の日も、「ああ、盗まれたんやな…」とことあるごとくぶり返していた。

 

僕は何か悪いことがあった時に、一つの逃げ道を用意してある。そう、ブログに書くことだ。ブログでは悪いことでも、ネタとして利用できる。なおさらイギリス留学中の僕にとっては、ネタ化するのは難しいことではない。僕はブログに”ロードバイクが盗まれた”という超個人的なことをどう書くか、授業後の帰り道に考えていた。

「面白く書くか?シリアスに書くか?なにか学べることはないか?できればアフィリエイトに繋げられないか…?」思考を巡らせていると、アイデアは突然と浮かんだ。

「そうや、クレジットカードや!」

クレジットカードは、アフィリエイトにおいて、大きく稼ぐために利用される常とう手段の一つだ。ブログ・ウェブサイト等のリンクを通してクレジットカードを申請、ゲットすることによって、紹介者であるブロガー、アフィリエイターはインセンティブをもらうことができる。しかも、一般的に金額は悪くない部類だ。

僕はこのクレジットカードに付帯されている”海外旅行者保険“について思い出した。クレジットカードには海外旅行者向けに、盗難や飛行機の遅延等、旅行中の様々な障害に対して保険がついている。それだ。

僕は家に着くとすぐ、この保険の適用条件を調べだした。盗難保険、90日以内の渡航、保険金の上限…。慌てて秋にイギリスへ来た日時を調べ、クリスマス休暇に日本へ帰る日付を調べてみると…89日。ビンゴ。ガッツポーズ。僕はもしかしたら、実はラッキーだったのかもしれない。

Twitterに呟いたあと親にLINEで相談。

さあ、ここからは次の記事へ続きます。本日は物語風に書いてみましたが、次はもう少し実用的な、”海外(イギリス)で盗難にあったときの対処法”等という感じで書く予定です。実は今、テスト3日前なので次がいつになるかハッキリと言えないですが、1週間以内には書こうと思います。ではでは、結果をお楽しみに~。

以上、わたぽんでした。ほなね!



わたぽんの簡単な自己紹介

わたぽん(@wataponf1_uk)
高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻中。未熟で失敗ばかりするも、その度に這い上がってきた。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでのインターンも獲得。自分と未来を信じて、夢は叶えられると証明したい。詳しいプロフィールはこちら

ブログ「わたぽんWorld」について

僕、わたぽんの「F1のエンジニアになる」という夢を叶える道を綴るブログ。2014年に運営開始。夢に近づけば近づくほど、更新頻度が減っていきます。
テーマは夢とイギリス留学。僕の生き方が励みになると言っていただくことが増えてきて、とても嬉しいです!

Related post

Comment

  1. No comments yet.

  1. No trackbacks yet.

プロフィール

わたぽん(@wataponf1_uk)

高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでの1年インターンも獲得。現在は卒業し、日本でF1から離れ生活中。 詳しいプロフィールはこちら


Twitter Facebook note

おすすめ記事

アーカイブ

Return Top