イギリスで最も上のパブへの道のり【前編】- Yorkshire Dalesでのドライブ
パブと言えばイギリス、イギリスと言えばパブ。
僕のインターン中に住んでいる小さな村には、スーパーも郵便局もないのに、なぜかパブだけはあります。(あとは家30件ほどのみ…)
それほどイギリス全土に染み込んでいるパブ文化。そんなパブの中でも、イギリス(Great Britain)で最も上に位置するパブは、たどり着くまでの道のりだけでも満足できるものでした。
国立公園を突っ切って。
イギリスで最も上にあるパブ
標高は海抜1732フィート(528m)。
「イギリスで最も標高の高いところにあるパブ」として名が通る、Tan Hill Inn。
なんや、たかが標高500mくらいで…なんて思った方は、その立地を見たことがないのでしょう。
そしてパブの裏は…
無。
信じられないほどに、無。
世界初の土地台帳(領土調査書)とも言われるDoomsday Book(1000年~1100年頃)では、この辺りの土地を”Wasteland”とも綴られたほど。本当に何もないんです。
しかし何もないところに唐突にパブができというわけではないそう。
以前(1929年より前)には、付近に炭鉱があったとのこと。だから、炭鉱夫の集うPublic House(=パブ)としてできたのが始まり。神様の悪戯で空から降ってきたわけじゃないのです。残念。
1929年以降は、近くの農家の支えと、自動車の発展によって保持されてきたTan Hill Inn。どこからそんなに農家が来るのか、不思議なほどに荒野だったけれど…。
詳しい歴史は、Tan Hill Innホームページで紹介されているので、是非ご一読を。
さて、僕はイギリス一標高の高いパブに行ってみました。
パブへの道のり、Yorkshire Dales – 丘と谷と羊の公園
道中しきりに、「実はヨークシャーの”ヨー”は”羊(ヨウ)”から来てるんちゃう?」とつぶやく人がいました。
同行者に無視され続けるも、理由は外に散らばるかわいい羊たちに見とれていたからだと思います。
写真が暗いのは、霧のせい。
朝からずっと濃霧で、数十メートル先は真っ白。そんな中、Yorkshire Dales国立公園に南から侵入していきます。パブがあるのは、Yorkshire Dales北部。縦に突っ切るようにドライブ。
ずっとなだらかな傾斜を登っているものの、運転席から見えたのは道路沿いにかろうじて見える羊のみ。それ以上でも、それ以下でもない。
ラスボスの住む城へと向かう道のようにも思えました。ドキドキした。
しかし進んでいると、霧が少し薄れてきました。遠くにはViadict(高架橋)が。
…おいこら、僕はエサやりのおじさんじゃないぞ。群がってもなんもあげへんからな…(パシャリ)
Yorkshire Dalesは、イギリスで二番目に大きな国立公園。ちなみに一番大きいのはスコットランドにあるCairngorm国立公園。実は夏にドライブへ行きました。運転してて心が洗濯された思い出。
しかし今回は冬のYorkshire Dales。
観光ブックには隣の湖水地方ばかりが取り上げられます。正直、Yorkshire Dalesについては何も知らず、ただただ地図を見てイギリスの真ん中に広がる国立公園に、絶え間ない興味というか、憧れがあっただけ。走っている間も、羊が多いなとは思ったものの、霧も立ち込め、夏に来ればもっと楽しめたんじゃないかと思ったほど。
そんな思いを吹き払ったのが、Yorkshire Dalesの渓谷でした。
突如現る、滝。
呆気に取られたまま反対方向に目をやってみると、ガードレールの向こう側は谷。
立ち込める霧のせいで、渓谷の底はよく見えません。この絶妙な恐怖間、最高です。
“Dale”とは昔の英語で、”谷”という意味。つまりYorkshire Dalesは、Yorkshireにある渓谷地ということ。小耳には挟んでいたものの、谷なんて信じていませんでした。
だってイギリスは安定大陸の代表例みたいな土地。大昔に地底活動は落ち着き、国土の多くは平地となだらかな丘のみ。ロンドンから出れば、なだらかにうねる土地が、簡単に見渡せる。山が見たければ、スコットランドへ行かなきゃいけない。そんなイギリスで、それもイングランドで、ゴツゴツとした谷や岩場が見られるなんて思ってもいませんでした。
ちなみにこの滝が流れている場所は柱状節理のようになっており、つまり六角えんぴつみたいに突き抜けた岩が立ち並んでいます。名前はあるのかなと調べてみると、Buttertubと呼ばれているそう。なんとも昔、商売人がこの峠を越える時にButtertubは休憩場所の一つとしてよく使われており、暑い日には運んでいるバターが溶けないようにと、この谷のような岩場の下に下ろしていたことが起源だとのこと。谷底は涼しいのです。僕は暑い夏でも、降りていく勇気はないのだけれど。
霧が晴れだすと、感動の連続。
青空が広がった時には、僕はYorkshire Dalesの虜になってました。
この辺りは、ツールドフランス2014年大会に、初日のコースとして使われた場所ということを、帰ってきてから知りました。また、イギリスで人気の車番組:Top Gearでは、よく”テストコース”として使われていたらしい。道理で走っていて楽しかったわけです。
後編に続く…
前編を終えて – わたぽんのつぶやき
訳も分からず憧れていたYorkshire Dales。そこは期待以上に、美しく壮大なところでした。
ピーターラビットの著者は湖水地方に恋に落ちたらしいけど、僕はYorkshire Dalesの景観に心を奪われました。まだドライブして一時間ちょいだったのに。
後編では道が一車線分に。ガードレールもなくなります。羊も少し。そしてついに、パブへと入っていきます…。この旅のハイライト。近々更新。
以上、わたぽんでした。ほなね!
わたぽんの簡単な自己紹介
わたぽん(@wataponf1_uk)
高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻中。未熟で失敗ばかりするも、その度に這い上がってきた。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでのインターンも獲得。自分と未来を信じて、夢は叶えられると証明したい。詳しいプロフィールはこちら
ブログ「わたぽんWorld」について
僕、わたぽんの「F1のエンジニアになる」という夢を叶える道を綴るブログ。2014年に運営開始。夢に近づけば近づくほど、更新頻度が減っていきます。
テーマは夢とイギリス留学。僕の生き方が励みになると言っていただくことが増えてきて、とても嬉しいです!
Comment
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通りがかりのものです。
ipod touchの記事でこちらにお邪魔して、イギリス留学中でF1エンジニアを目指していると知り、興味を惹かれました。「ヨークシャーデール国立公園」は2016年の夏に訪問し、わたぽんさんが通った ‘Buttetub Pass'(「滝」と書かれている場所は昔地元民がバターを補完した場所で、そこから峠道にこの名前がついています/現地ガイド談)を通ったので懐かしくてコメントします。
ヨークシャーデール国立公園は、荒涼とした素敵な景色の連続で、もう少しゆっくり観光したかったです。
どうぞ有意義な留学ライフを送って夢をかなえてください。
英国の冬は長いので、観光で行くにはいいけれど住むにはなかなかdepressingな国ですよね。日本ほど気軽に医者にかかれないので、何より健康には留意してお過ごしください。
sunsetさん
Yorkshire Dalesに訪れたんですね!夏は特に気持ちが良さそうです。僕も是非、夏にまた訪れられたらと企んでいます。
お気遣いのコメントありがとうございます。