「イギリスのごはんってマズいの?」に対する答えと種々の考察

こんにちは、わたぽんです。

初めて会う人の実に9割、いや9割5分の人に聞かれる質問があります。

「イギリスのごはんってほんまにマズいんですか?」

またきたか……。
そんなストレートに聞くこともないやろう、イギリスの気持ちにもなってあげなさいよ……と思いつつも、今宵はどのようにボケようか?関西人の血がうずく。そうして、また適当なことを教える。そんな繰り返しに4年もしたら飽きてきたので、そろそろちゃんと真正面からぶったぎってみようと思います。イギリスの飯って、実際どうなん?

 

まず結論「おいしくはない」

マズいとは言いません。でもおいしいとも言えない。

最近はイギリスでも食は改善されてきた、なんて言うけれど、実際は10点満点の内-2点だったものが3点になったとか、そのレベルが多い気がするのはなぜか。

そういえば先に断っておくけれど、僕は自分の舌を信用していません。小学生の頃に焼きそばにコーラを混ぜた物をうまいと言ったら、友達が全員一致で否決したのです。それからというもの、多分僕には味を語る資格はないんやろうなと、なんとなく分かっています。グルメの人や、あるいは僕よりひどい舌を持っている人がいれば、全く違う考えになりえます。しかし幸いなことに、イギリスごはんに対する評価は、人それぞれちょっとずつずれるものです。

例えばフィッシュアンドチップス。

僕はあのアツアツに揚げられた、羽子板ほどの大きさもある白身魚のフライを、何の工夫もされていないフライドポテトと一緒に食べるのが好きです。紙に包んでもらうと油でべっとべとになって、揚げられたはずの衣が柔らかくへにょへにょになるのもご愛敬。塩とビネガーをかければ万事オッケー。とまでは正直いかないものの、まあ結構いけると思っています。でもそれを周りに話すと「正気か?」「きつすぎる、無理」と、真っ向から否定されることも。もちろん「せやな」と言ってくれる人もいます。

イギリスの国民食でさえ、このレベル。主観的意見なんて結局、その人個人の意見にすぎません。その点は悪しからず。

しかし4年間イギリスで生き延びたという自負はあります。それも庶民として、超低価格スーパーでの暮らしから一般的普遍的スーパーでの日常生活、そして良さげなレストランでのごはんと、それなりに経験を積んできました。時には自分から特攻していき、時にはイギリス人に連行されて。

その結果僕の中で培われた意見が、「おいしくはない」なんです。

 

もし目の前にイギリスでのごはん、ベルギーのごはん、フランスのごはん、イタリアのごはんが並べられ、どれを食べたいかと聞かれたら、まずイギリスを選択肢から省くのは理想的なステップです。何を好んで「おいしくはない」ものを選ぶのか。考えるまでもなく明らかなはずです。これ以上僕に言わせないでください。

だけれども、実際イギリス国内で生活してみると、ちょっと意見は変わってきます。なんというか、別に過ごせるのです。生きていけるのです。さすがに1年目は慣れないことも多かったけど、2年目、3年目と進むにつれて、食生活へのストレスは消えていきました。慣れです。素晴らしいもので、イギリスのあの味気のないパンを、何の疑いもなくかぶりつくことができるのです。問題意識はありますが……。

そういえばかつて読んだ「イギリスはおいしい」というあからさまなタイトルのエッセイでは、とあるイギリス人が海外帰りにイギリスのごはんを食べると、安心して嬉しそうに食べてたシーンがありました。日本人だって生魚をうまいうまいと食べてるけど、これだって慣れによるところが大きいし。慣れとは怖い。

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周囲の意見その1「茶色い」

やっぱり自分の舌が信じられないので、友達とイギリスの食について話していた時に、記憶に残っている批評を引っ張りだします。

「茶色いのばっかり」

たしかに。
そういえばそうや。

フィッシュアンドチップス、エールパイ、ステーキパイ、ソーセージ&マッシュ、フィッシュパイ……。茶色い。それぞれちょっとずつ違う茶色だけど、全部茶色い。他の色の混入を許さない。フィッシュパイなんかは中は白いけれど、出来上がったものを上から見ると、それは見事にこんがりと焼け焦げた茶色。もしかしたら豆も茶色いんじゃないかと考えてみたら、そういや茶色かったです。ブリティッシュブレックファストなんて、ほぼほぼ茶色。僕はイギリス料理に敬意を払います。

茶色いというのは、結果論。ようは、似たような調理方法で、似たような物を作っているから、似たような色になる。もちろん味も、似たようなものになる。というか、味付けというものが基本的にされていない。これはイギリス料理がマズいと評価される、一因でもあります。

イギリスのそこいらにあるパブに行くと、テーブルやカウンター横に、必ず用意されているセットがあります。塩、胡椒はもちろんのこと、ケチャップ、マヨネーズ、ビネガー、マスタード等々、あらゆるソースが揃ったピクニックセットのようなもの。これを各々駆使して、茶色に彩りを加えていきます。そう、イギリスでの食事は、自分でカスタマイズすることが念頭に置かれています。

「塩もケチャップも自分で好きにかけてね」
そう無責任に言い残して、店員さんは去っていきます。

つまり、自分で味付けをしないと、味がついていない。素材の味と言えば聞こえは良いけれど、実際はただのシンプルなじゃがいもや、白身魚です。おいしくはない。これはよく言われることですね。

 

周囲の意見その2「めっちゃおいしいものがない」

もう一つ、イギリスでのごはんに関して好きな批評を思い出しました。

「絶対的にめちゃくちゃおいしい!!というものに出会わない」

なるほど。
大きく頷き、賛同を示します。握手しよう。僕も出会ったことがありません。

感動するような味に出会わないと言うのでしょうか。実際、これめっちゃうまいやん!!!!となる時はあっても、たいていそれまでに食べたイギリスごはんに舌がやられた結果、”ちょっと良い”ぐらいの味でも過激に反応しているからです。あくまで相対的な感動。その友達のように舌が肥えている人にとって、絶対的に超おいしいもの、それがないと言うのです。なんなんやろう、頑張れよイギリス。

トイアンナ氏のブログでは、イギリス版食べログの評価という数値的指標を用いて、この惨劇を評価しています。

実はイギリス版食べログもある。国内全土のレストランランキングで最高スコアが3.55というのがイギリスの食力を物語る……。頑張れ、イギリス!
いつかイギリスへ留学したい人へ、経験者が伝える最低限の知識7つ」より

2018年9月の最新情報を確認してみたところ、最高評価は3.61。しかもそのレストランというのが、ミシュラン三ツ星シェフ:ブルメンタール氏によるお店。うむ、たしかに微妙な評価……。なんなんやろう……。まああくまで食べログや。

 

しかしこれじゃ、ほんとダメダメに聞こえてしまいます。ちょっとイギリス料理を持ち上げさせてください。だって、イギリス料理を僕は「マズい」とは言わないからです。マズくないものもあるもん。傾向が似て淡泊で質素なものばっかりだけど、それイコール食えないってことじゃない。多分、日本での普段での生活の中で、たまたま木曜日のお昼ごはんに出てきたら、イギリス料理ってこんなもんかと思いながら食べれるものが多いと思います。まあ、店によるけど。

そう、店による。これは絶対に触れておかなければいけません。

 

店とコスパと階級の名残

分かりやすいのは、値段による違い。

イギリスは階級社会。安くてうまいものを食べようなんて、そんな色の良い話が溢れる環境ではありません。お金を払えば、それに比例して味が上がる。質が上がる。吉野家と松屋とすき家が”安くてうまい”を競ってる日本は、なんて幸せな環境なんでしょうか。

牛丼屋を挙げたところでもう一つ思い出されるのが、コスパという点。

思うに、もし1ポンド=150円とかじゃなくて、1ポンド=100円だったら、イギリスごはんへの不平不満抑圧言及などは収まるんじゃないかなと思います。と言うのも、感覚的に1ポンド=100円なら、そんなもんやろうという味だから。

例えばサウサンプトンでは、6ポンドでサイズ自由のピザが売っています。味は正直微妙。僕は普段それを日本円に換算して、900円だとか1000円ぐらいだとか思って食べてるのですが、もし仮にこれが600円だったら? 味が微妙でも、まあこの値段ならいっかってなる。

レストランでの食事にしろ、一食15ポンド出せば、まずまずのものが食べれる。それを1500円と見なすか、2250円と見なすかでは大きな違いです。現状、イギリスでは2250円と換算しなきゃいけない。そこに日本だとだいたい1500円ぐらいで食べれたよな、なんていらない事を思い出す。直接比較したら、イギリスは白旗をあげるしかない。相対的に、同じコストに対するパフォーマンスが低いと感じてしまいます。

 

絶対に避けるべきパッケージ

コスパや階級の話はなにも、レストランに限った話ではありません。

あれはイギリス一年目、僕がまだ何も知らなかった頃、中流スーパー:Sainsbury’s(セインズベリー)でとある冷凍のレンチンごはんを買った時のことでした。ラム肉の何か。ラム肉なんてあんまり食べないし、良いかもと思って手に取ったのでした。

それを寮に帰ってキッチンで食べようとした時、たまたま居合わせたフラットメイトの顔が引きつっているのを見つけました。

尋ねてみると「これはマズそう……」とつぶやくイギリス人。ちょっと笑った。何を今更。

でも食べてみると、本当に本当にマズかった。これほどおいしくないラム肉を、どうやって作りだしたのかとスーパーの責任者に問いただしたくなるほどマズかった。逆にレシピを公開してほしいほど。ではなぜそのイギリス人フラットメイトは、食べる前にマズそうと勘づいたのか?

 

「パッケージがあまりにもシンプルやん、これ」

見てみると、簡素な紙のパッケージがテーブルの上に転がっている。

彼曰く、「パッケージの見た目が豪華で華やかであるほど、味はマシになる」とのこと。豪華になってもうまいとは言わんのかいな……とこっそり思いつつも、重要な事を学びました。シンプルイズベストとは、イギリスでは通用しない法則でした。

この様に、ハズレを引けばとことん落としてきます。しかし生きていくには、この手のハズレを避ければ良いわけです。そしてこれは意外と簡単で、ちょっとしたコツを掴めばハズレを引く可能性はグンと下がります。シンプルすぎるパッケージを避けるというのはその一例で、他にも僕は”Tevern”と名の付くレストランやパブでは食事を取らないようにしています。良い思い出がない。まあこれはとばっちりかも。あとは見た目が悪い店は、ネットでの評価が悪ければ入らない。見た目が悪くてもおいしい場合、たいていネットでちゃんと評価されてる気が。間違っても”Proper”とか”The best”とか、”Authentic”などというワードに騙されてはいけません。そうすれば、少なくとも「イギリスの飯はマズい」とはならないはず。あれ、僕ちゃんとイギリス飯をフォローできてるのかな?

 

イギリス飯の逃げ道は○○料理

そこで僕は、逃げ道を見つけました。いや、見つけたというか、ある意味これもイギリスのごはんと言えるのかもしれませんが。

イギリスは様々な国や地域をルーツとする人が入り混じる国。かつては「太陽の沈まない国」という異名も持つほど、世界中に植民地を持ってもいました。そんな中、様々な場所の料理も持ち込まれるようになりました。

 

特に有名なものはインド料理。

イギリスにおけるカレーは中々いけるもので、僕も好んで食べることがあります。日本のカレーとは違う、インド風のカレー。中でも特に一般的なのはティッカマサラと呼ばれるカレーですが、これなんかはインドにはないカレー。立派なイギリス発祥のカレーです。イギリス人の友達は、

「カレーはイギリスの第二の国民食だ」

と豪語しながらナンにかぶりついていました。取り巻き達もウンウンと頷いている。僕も分かったようにウンウンと頷く。

また、中華料理も人気。特に最近は勢力も拡大してるらしく、イギリス中いたるところに中華の店があります。我々日本人としては、ヨーロッパのごはんに比べるとやっぱり舌に馴染みやすい。飲茶だってある。例えばロンドンの中華街にあるOrient Londonなんかは、コスパ高い方だと思う。まあちゃんと店選ばなきゃ油まみれのコテコテギトギト料理やけど。

 

しかし僕が最もおすすめするのは、多分このブログの読者ならもう気づいてるけど、トルコ料理。ケバブを始めとしたトルコ料理は、コスパ最高の必須アイテム。例えばケバブ。どうも夜遊び帰りの夜食としてとらえられがちだけど、一番のおすすめはレストランで席について、落ち着いて食べること。ロンドンでも10ポンドほどで、豪勢にうまい肉の塊を食べることができます。

魚だって食べた。普通にうまかった。

正直、やるやんって思った。それでも、めっちゃおいしいのか?と聞かれたら、やっぱり相対的に、としか言えないような……。

 

わたぽんのまとめ的なにか

そういやアフターヌーンティーやクリームティーについて書くの忘れてたけど、クロテッドクリーム、あいつは中々いけます。クリームの中でも特に脂肪分の多い部分をすくい取ってできたクリームやからね。そりゃうまい。太る。あとも一つ追記するなら、スコットランド西海岸のそれなりのレストランのごはんは基本おいしかった

それでも僕は「イギリスごはんは本当のマズいのか?」と聞かれると、

「おいしくはない」
と言います。マズいってわけじゃないけどね……。

それはイギリスごはんを全体として忠実に批評しつつも、これからイギリスへ行こうとする人への愛情から来る言葉でもあります。

イギリスのごはんに絶対に期待させちゃいけない。しかし、マズいなんて言ってイギリスへ来る人をげんなりさせたり、行きたくないと思わせたくもない。ただ別に特別おいしくないだけなんです。それでいい。そしたら稀に現れる希少種のようなおいしさや、ふと自分好みの味に出会った時に、ちょっとした感動を覚えるのです。

そうやってごはんへの認識を誤魔化しながらイギリスでは生きています。

以上、わたぽんでした。ほなね!



わたぽんの簡単な自己紹介

わたぽん(@wataponf1_uk)
高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻中。未熟で失敗ばかりするも、その度に這い上がってきた。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでのインターンも獲得。自分と未来を信じて、夢は叶えられると証明したい。詳しいプロフィールはこちら

ブログ「わたぽんWorld」について

僕、わたぽんの「F1のエンジニアになる」という夢を叶える道を綴るブログ。2014年に運営開始。夢に近づけば近づくほど、更新頻度が減っていきます。
テーマは夢とイギリス留学。僕の生き方が励みになると言っていただくことが増えてきて、とても嬉しいです!

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プロフィール

わたぽん(@wataponf1_uk)

高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでの1年インターンも獲得。現在は卒業し、日本でF1から離れ生活中。 詳しいプロフィールはこちら


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