とにかく何かから逃げ出したくて、あてもなく逆方向の電車に乗ってた中学生の頃
クリスマス休暇。いわゆる就職活動で、実家のある京都と会社のある東京を行き来する時間が続いています。
今は帰りの新幹線の中。窓側の席。ジャケットを脱ぎ、スカイブルー色のネクタイをほどき、シャツの第一ボタンから自分を解放する。リラックスしたところで思い出すのは、面接のこと。面接相手のネクタイの結び目がこれでもかと乱れていて、どうやったらあの結び目ができるのかずっと気になってました。
朝時間がなかったのかな?
それともあれがあの人の結び方なのかな?
一応のマナーとして、ネクタイの結び目ってどの程度見られるものなんだろう?
どうでもいいことばっかり考えてたら、面接は終わりました。
一通り面接について振り返ると、読んでいる本を取り出す。
「凍りのくじら」
「高校生の理帆子に、どこまでも、共感。-十代の私は、自分のことが大嫌いだった。」
帯に書かれた触れ込みに惹かれ、買ってしまった小説。以前の続きから読みだしてみると、ちょうど、電車に乗っているシーンに出くわしました。主人公の理帆子が、精神的に気分が悪くなって学校を早退した帰りの電車の中。
「どこに行きたい、何がしたいという明確な目的もなく揺れる旅。私は窮屈で、遠くに行きたかった。知らない町の山の中で、誰にも邪魔されずに星を見上げたかった。」- P269
ああ、なんだか懐かしいな。
それが最初に抱いた感想。僕も似たことを思い、電車に身を任せたことがありました。どこか遠くへ行きたくて。周りの人が行かない場所に行きたくて。
中学生の頃、学校の帰りに乗った電車で、あえて全く別の駅を目指すことがありました。そのまま家に帰りたくなくって、終着駅まで行く。適当な駅で折り返してしまう時もあります。上りと下りでホームが別々で、一度改札を出なきゃいけない駅なんかだと、やべっと思いながら次の電車でさらにもう一歩先へ行ったりしてました。改札出たら、何百円ものお金がふっとぶ。中学生にとっては大金。危ない危ない。改札を出るのは、折り返していつもの駅に戻ってから。
新しい駅に到着すれば、その記しとして、その駅のポケットサイズに折りたたまれた時刻表を持ち帰りました。エナメルバッグの外ポケットにたまる、色んな駅の時刻表。当時は本気で思ってました。「全部集まったら、将来的にプレミアがついて売れるんちゃうか」なんて。
購入した区間外の電車に、正当な料金を払わずに乗る。これをキセル乗車と言います。
違法行為だと知ったのは、たしか中学二年生の時。都市部の普通列車で切符を確認されたことなんてなかったから、気にしたこともなかった、というのは言い訳。知ってしまった今は、さすがに同じことがしにくい。”innocent”という単語を、哀れにも思い出す。
なんで遠くへ行きたかったんやろう。
就職活動で得た癖「自己分析」。面白いからついやってしまう。子供の頃って採算の取れなさそうな動きをたくさんしてました。その理由を探りだしていくのは面白い。僕の場合、たいてい何かを怖がっていたり、何かに苦しんでいる自分を見つけられます。遠くへ行きたい感情からももれなく、当時の息苦しさを思いださせてくれました。
息苦しさ。
それは別にハッキリとした形のあるものではなかったけれど、梅雨時のモワッとした湿気のように、自分を取り包んでいました。
例えば学校の帰り道。歩くべき道が指定され、わざわざ印刷されて丁寧に指導がされる。安全のため、そしてご近所様に迷惑をかけないため。
定期券により定められた、通学電車の区間。もちろん親も、それを想定している。多分、自分が親でも同じことを願っていると思います。同じ電車で、同じルートで帰ってきてほしいって。
同じことの繰り返し。
決められたルートをたどる。それは通学だけじゃない。中学、高校、大学、そして社会人。その中でも一般的に良しとされるルートがあって、周りはそれを望む。ルールがあって、それに従うことが求められる。もっともらしい様々な理由がつけられて、動きが制限されていく。
僕はそんな世界が、大の苦手でした。
自分なりに、なんか嫌だって感じていました。
だからテスト期間なんかで学校が早く終わったりすると、僕は喜んで逆方向の電車に乗りました。そしてどこか遠くへ行く。家にそのまま帰りたくない。いつもと違うことがしたい。でもこれといって行きたい場所があるわけでもない。ひたすらに、ただ乗るだけ。
それは、当時の自分の悩みを体現した行動でもありました。
日々の学生生活の中で、目の前に積み上がっていくしたくないこと。なんか嫌やなあと思うことが増え、ストレスは溜まっていく。あるいは当時はストレスかどうかなんて分かってなかった。なんとなく、気が重くなっていくんです。だからパーッと何かしたい。ワクワクするようなことがしたい。
でも、特に何かしたいことがあるわけでもありません。カラオケに行きたいかもしれない。でもカラオケに毎日行くようなお金もないし、お金があったところでどうせすぐ飽きる。飽き性だから。妙にそんな未来が見えてしまうから、余計に何をしたらいいのか分からなくなる。
何かしたいのに、何もしたくない。
だから電車に乗って、ただ遠くへ行く。
そうすれば一時的にでも、新しい世界を垣間見ることができるし、ルールとルートでがんじがらめになった場所から、逃げ出すことができる。退屈な日常が、ちょっとだけ彩られる。手っ取り早く、しかも改札からでなきゃお金もかからない、うってつけの遊びでした。
そんなことを思い出しながら、ふと新幹線の窓から外を眺めると、町がうっすらとオレンジ色に染まっていました。僕にとっては不安の色。将来どうなるのか不安で不安で仕方がなかった中学の時に、一人、電車の中から見てた色。
そんな不安だらけだった世界が、F1を見てから途端に色合いを変えてしまい、今ではイギリスの大学に通っています。夢であったF1の世界でも、インターンとして少し働けた。にも関わらずまた日本に帰ってきて、今はビュンビュンと新幹線でとばしてる。
どこへ行けるのかをずっと考えていた。
外の世界への憧れと、それでも中々飛び出せないもどかしさと。
あるいは、どこへ行く資格が僕にはあるのかばかり考えていた。
でもちょっと違うかなって今は思う。
「どこへだって行ける。」
過去の自分にそう伝えたい。そして今の自分にも。
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以上、わたぽんでした。ほなね!
わたぽんの簡単な自己紹介
わたぽん(@wataponf1_uk)
高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻中。未熟で失敗ばかりするも、その度に這い上がってきた。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでのインターンも獲得。自分と未来を信じて、夢は叶えられると証明したい。詳しいプロフィールはこちら
ブログ「わたぽんWorld」について
僕、わたぽんの「F1のエンジニアになる」という夢を叶える道を綴るブログ。2014年に運営開始。夢に近づけば近づくほど、更新頻度が減っていきます。
テーマは夢とイギリス留学。僕の生き方が励みになると言っていただくことが増えてきて、とても嬉しいです!
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