寒い冬の夜に読みたい、村上春樹氏のアイルランド・アイラ島紀行文
こんにちは、イギリスで大学生してるわたぽんです。
僕はイギリスが好きで、イギリスに来たのではありません。しかしイギリスの大学を志望・進学してから、少なからずの興味がイギリスとその近辺へとまき散らされています。今回そのとばっちりを受けたのが、アイルランドとアイラ島。というのも、たまたまタイトルに惹かれて手に取った本が、この2箇所での紀行文だったからです。
アイルランドには特に興味がなかったし、アイラ島は名前さえ知っていたか怪しいレベル。名前は知っていても、場所は知らなかったです。皆さんは知っていますか?
でもこの本を読んで、僕はサウサンプトン大学在学中に行ってみようと思いました。寒い冬の夜に、自宅のベッドの上で。
村上春樹氏が書いた2000年頃の紀行文
村上春樹。
その名を誰もが一度は聞いたことがあるような、有名な作家。毎年ノーベル文学賞候補に挙げられながら、毎年選ばれない謎な人。僕はその昔、超有名な作家は皆死んでいると思っていたのですが、村上春樹氏がまだ現役バリバリ、しかも若若しく活躍されていたのを知って驚いたことがあります(かなり失礼な思い込み、申し訳ございません)。
しかし、ちょっと調子乗って彼の小説を読んでみると、なかなかに理解できない部分が出てきます。「ノルウェイの森」や「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読み終わったとき、僕はなぜこれらの本が有名で、売れているのか謎でしかありませんでした。事実、売れていて人気もあるので、僕のこの感想は無知や文学への理解のなさを拡散しているだけでしょう。
一方、彼のエッセイ・紀行文は、かなり面白いと思います。「ノルウェイの森」を読んで憂鬱になった人も、国語で赤点を取った人でも、楽しんで読めています。もちろん、彼の美しい文章とクラシック音楽や酒の蘊蓄(うんちく)の数々はそのままに。
ところで、アイルランドの場所はなんとなく分かるかと思いますが、アイラ島はイギリス(スコットランド)の本島と、アイルランドの間付近にあります。
2000年頃(多分1999年)の紀行文なので、現在のアイルランドやアイラ島の姿とは若干違う部分があるかとは思います。しかしイギリスやアイルランドという国は、世の流れで近代化が進む一方で、恐ろしく変わらない部分が多いのも事実。
本を読みながら、僕はイギリスでの生活を横目に見つつ、アイルランドやアイラ島での生活を思い浮かべました。すると、不思議とすんなり、情景が頭の中に入ってきました。(もちろん紀行文には写真もたくさんあるからなのですが。)僕が言いたいのは、「今のイギリス生活の延長線上に、たしかにそういう場所はありそうだな」という感覚があったということです。今の話として十分、楽しめる。
なんとなく、コーンウォール地方の雰囲気に近いものがありそうです。つまりイギリスの美しい田舎。
タイトルからしてメインはウィスキーだけど…
この本のタイトルは、「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」。文庫本の解説も、シングル・モルトという単語から始まっています。”前書きのようなものとして”には、”旅のテーマはウィスキー”と著者自身が書いている、どうしようもない酒飲み本ともとれます。
しかし、これは「酒好きのための本」であり、「ウィスキーを通して見たアイルランドとアイラ島の姿を記した本」でもあります。ウィスキーを飲むか飲まないかは、さほど重要なことではないでしょう。少なくとも二十歳の僕は、ウィスキーをよく分かっていません。
はっきり言って、かなり薄い見た目の本。そこにアイルランドとアイラ島を知るために、必要十分な量があるのか、定かではありません。けれど、どこかその二つの島の様子や深いところというのが、しっかり感じ取れる内容です。僕が好きなシーンは、(エッセイの真髄部分ではないかとは思うけど、)彼のアイルランドでの夕方以降の過ごし方について書いた部分。
だいたい4時ごろには目的地について、宿に入りたい。シャワーを浴びて、ふらりと近所のパブに入る。とりあえず夕食前に黒ビールを一パイント飲む必要がある。このあたりの時間は、パブにとってもっとも暇な時間だ。だからたいていはがらがら。主人は所在なげに新聞を読んだり、テレビを見たりしている。もし土地の情報を仕入れたければ、彼に話しかけてみるといい。(…中略…)
おいしいビールを飲んで一息ついたら、町をぶらぶらと散歩し、店などをのぞき、良さそうなレストランを物色する。だんだんお腹も減ってきた。旅行のうちでもいちばん楽しいひとときだ。(P84より)
と、こんな感じののどかな雰囲気が、本の隅から隅まで広がっています。そしてそののどかさは写真という視覚的イメージと共に、本を飛び出して目の前に広がっていきます。緑豊かな、アイルランド。潮のかおるアイラ島。
ちなみにパブの主人というのは、僕にとってはまだまだ新鮮なものです。イギリスにはチェーン店的なパブもあり、主人というよりお前、バイトやろ。というような人の方が僕は見かけます。もしかしたら、あれが主人なのかもしれませんが。あるいは時間帯が悪いのか。
ロンドンのパブなんかは、もっと違う光景が広がっているのかもしれません。
わたぽんのまとめ的なにか -寒い冬の夜に読みたい本
この紀行文は村上春樹氏が6月に訪れた様子を描いたものですが、彼の文章、そして付随する写真を見ると、どうも冬に読む方が正しい気がします。冬の早い日暮れにどこか物足りなさを感じながら、暖かい部屋で、静かなところで。
できればこじんまりとした場所が良いでしょう。エアコンの効いた自分の部屋か、あるいは夜も静かな隠れ家的カフェか。
必ず夜に読みましょう。昼には昼に読むべき本があります。やるべきことがあります。夜、すべてのタスクを終えてあとは寝るのみ、という状況で読むのが最適でしょう。薄い本なので、すぐに読み終えられます。
読み終えてもまだ寝る時間じゃない場合もあるかもしれません。冬の夜は長いです。そんなときは、ウィスキーでも飲めばいいんじゃないですか。遠い島国を思い浮かべながら。僕は麦茶を飲みながら、この記事を終えます。
新品価格 |
わたぽんの簡単な自己紹介
わたぽん(@wataponf1_uk)
高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻中。未熟で失敗ばかりするも、その度に這い上がってきた。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでのインターンも獲得。自分と未来を信じて、夢は叶えられると証明したい。詳しいプロフィールはこちら
ブログ「わたぽんWorld」について
僕、わたぽんの「F1のエンジニアになる」という夢を叶える道を綴るブログ。2014年に運営開始。夢に近づけば近づくほど、更新頻度が減っていきます。
テーマは夢とイギリス留学。僕の生き方が励みになると言っていただくことが増えてきて、とても嬉しいです!
Comment
No trackbacks yet.
No comments yet.