努力は裏切ることもある
こんにちは、イギリスで大学生してるわたぽんです。
僕はいつも、頑張れば良いことあると信じています。そして実感もしています。今までに積み重ねてきた、やめなかった事が、目標に届けてくれたと。
一方、頑張っても、どうにもならない時もあります。
いくら成長しても、優秀でも、最後は周りとの兼ね合わせ。時代にあってなければ、一年違えば、あるいは数日、数時間違えば、簡単に状況は変わってしまう。ちょっと不条理な世界。
先日、僕の所属するFormula Studentのチームで、来年度のcommittee(役員?幹部?リーダー?って訳せばいいのかな)を決める選挙がありました。当ブログでは度々出てきてるFormula Student、いわば、毎年レースカーを作るための組織作りもしているのですが、チームや各部署のリーダーを決めるのは、その中でも重要な任務の一つ。
たかだか大学の、とあるソサエティーの、毎年恒例の選挙。ですが、それは思っていた以上に複雑で、難しいものでした。
リーダーを決める戦い
サウサンプトン大学のFormula Studentチーム。若いチームというのもあり、まだ上位チームとは言えません。ですが、僕達はイギリストップのチームを本気で目指し、チーム作りも毎年真剣に考えます。
また、committeeになりたい人にとっても、このチームでの活動は、将来へと大きく繋がっています。
よく使われる指標が、F1チームに何人行ったか。
昨年度はたしか、チームの中から8人が、F1チームでインターンを獲得か就職。
今年度も5人がインターンに選ばれ、他にもF1チームで就職が決まってる人もいます。
この内のほとんどが、チームのcommittee経験者。これは他大学と比べても、かなり良い数字でしょう。
選ぶ側も、選ばれる側も、真剣。
昨年、僕はこの選挙に、真剣にウィスキーとサイダー(シードル酒)を飲んで挑みました。
そんな中でも、来年度のエアロリーダー(2人)を決める投票は、荒れました。というか、候補者が共に甲乙つけがたく、選ぶのがとても難しかった。
彼らは今年、僕らのチームで活躍しました。
自分が現エアロリーダーとして言うのもなんですが、明らかに去年の同じ頃の僕より、優秀でした。彼らなら、どちらでもサウサンプトンのエアロチームを発展させられると感じたし、それは投票権を持つ他のcommitteeメンバーにとっても似た思いでした。
最後は、もし一人でも翻っていたら、あるいは欠席者が一人もいなかったら、変わっていたかもしれないという僅差。正直、僕達が正しい選択をしたのか、確証がありません。来年度の車ができるまでお預け…でしょうか。
(今年度の車。来年のメンバーがこれをどう発展させるのか、楽しみ。)
当人の人生を変えるかもしれないという事実
選ばれた方は、とても嬉しかったでしょう。彼は一年間、ずっとエアロリーダーになりたいと言ってました。僕も去年、同じ思いでした。飛び跳ねながら家まで帰った記憶があります。
逆に、選ばれなかった方はどうなのか。きっと、悔しいに違いありません。最初はどちらかと言えば不利だった下馬評を、投票直前のプレゼンで一気に持ち返した。だけどあと一歩。これが一番、辛い。
それだけではありません。
Formula Studentでの活躍が、僕達の多くが目標としてるF1チームへの就職に大きく関わってきます。イギリスにはCVという、いわゆる日本でいう履歴書のようなものがあります。そこでサウサンプトン大学でのリーダー経験を書ければ、とても強い。
僕達はチームの将来を第一に考え、投票します。
しかしそれは間接的に、彼らの人生をも左右しかねない決断となります。僕の場合、去年Head of Aerodynamicsに選ばれていなかったら、今年のF1チームでのインターン獲得には、絶対に繋がっていませんでした。正直に、そう思っています。
そう考えていくと、だんだんと情が入ってくることが、自分でも分かりました。
駄目なことです。
能力、客観的な事実、評価が大切なのであって、リーダーを選んだりするのに情を介入させるのは、決して得策とは言えません。
投票直前、一年間の活動を見直してみます。それは彼らの活躍を再評価するためであり、また、余計に情を侵入させることにもなります。
「彼らの人生を変えるかもしれない。」
決して他人事でもなく、正直、選挙の時に全く考えなかったとは言いません。
努力は裏切る
そもそも、なぜ彼らは優秀であるのに、そこから一人を選ばなければいけなかったのか。それには、チーム内事情がありました。
昨年、Head of Aerodynamicsだった先輩。彼は僕を最初に拾ってくれた人でもあるのですが、今年度はF1チームで1年間のインターンをしています。
彼が来年、そこでの経験をもとに、もう一度Head of Aerodynamicsを務めたい。そう言いました。もはや、断る理由がありません。チームにとっても、願ったり叶ったり。
そのおかげというか、あおりを受けたのが、今年の候補者達。僕達は、もう一人を選ぶ必要に迫られました。
先ほども書いた通り、彼らは去年の僕よりも優秀です。言い切れます。あんな英語もろくに喋れず、うわべだけの知識を喋っていた僕より、全然できます。もしも、彼らや僕が一学年でも違っていたら、結果は違っていたかもしれません。
それでも、エアロリーダーになれる人は限られている。
例え同じ学年の時に、同じ年齢の時に、同じ努力をしても、目標に届くかどうかは分からない。
努力は裏切らないというけれど、結局、運が悪ければどうにもならない事もある。自分が同じレベルにたどりつけても、その時代によって、状況によって、結果はいとも簡単に変わってしまう。
これは別に、今回の選挙だけではありません。目標、結婚、いやもっと端的に、普段の生活…同じ努力・生活が常に同じ結果を呼ぶとは限りません。運。それは決して無視できない、大きな存在です。
最後は〇〇だ
情、運…
選挙ってなんなんや。決断ってなんなんや。
スキルや能力を見ているようで、最後はそれだけじゃない。
情と運。
違うようで、かなり近い親戚のような要素だと思っています。
昨年の夏にインターンをしてた時、社員さんから言われました。
「最後に決断をするのは、人間という生き物だぞ。」
コンピューターが発展してきてる今の時代。それでも、ほとんどの重要な決断は、人間によって行われています。優秀さやスキルだけじゃない。目に見えにくい部分、そこが結構、重要です。僕も今回感じましたが、情が全く入らずに決断できるというのは、そう簡単じゃありません。
また、人と人とが関わり合うと、自然に状況はどんどん変わっていきます。万華鏡のように、目まぐるしく変わります。
そこで、運がめぐってくるかもしれません。
運だと思っていたことでも、実はその裏で情が働いていたとしても、なんら不思議ではありません。事実があって、情が重なり合って、人が関わり合って、運がやってきたり、こなかったりします。浜辺に打ち寄せる波のように。
努力は裏切らない。
先ほどはこの言葉を否定しましたが、裏切らないと信じ、万華鏡の世界を生きていけば、運は巡ってくるかもしれません。信じていてもやってこないかもしれないけど、信じなければやってこない。
どこかサンタクロースのような、運。そういうものじゃないでしょうか。
わたぽんのまとめ的なにか
なにはともあれ、僕達の後を継いでくれる人がいて嬉しいです。結構シビアにいったし、”sacrifice”と度々僕らは自虐的に言ってました。自分を犠牲にして、Formula Studentに全力を注ぐ。僕はおかげで、試験前の今苦しんでます。(授業行けてへーん)
努力ってなんなのか、運ってなんなのか。人間が決めるとはどういうことなのか。
今までずっと、自分が夢を叶えるため、主観的に見てました。それが今回、後輩たちを見て、決断する側として考え、また少し理解が深まったと思っています。
選ばれなかった方も、彼なら乗り越えられると信じています。
選ばれた方には、来年度のマシンで僕達を超える活躍をしてほしい。
そして来年のサウサンプトン大学のFormula Studentは、かなり強くなるでしょう。一年間インターンに行って一緒に働けないのを、少し残念に感じるほどです。1997年頃のフェラーリF1のような、あるいは2001年の阪神タイガースのような…(勝手に)そんな空気を感じています。
運が良いのか悪いのか。
僕達の選択は正しかったのかどうか。
すぐには答えは出ないので、選挙後は皆でパブへ繰り出しましたとさ。
わたぽんの簡単な自己紹介
わたぽん(@wataponf1_uk)
高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻中。未熟で失敗ばかりするも、その度に這い上がってきた。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでのインターンも獲得。自分と未来を信じて、夢は叶えられると証明したい。詳しいプロフィールはこちら
ブログ「わたぽんWorld」について
僕、わたぽんの「F1のエンジニアになる」という夢を叶える道を綴るブログ。2014年に運営開始。夢に近づけば近づくほど、更新頻度が減っていきます。
テーマは夢とイギリス留学。僕の生き方が励みになると言っていただくことが増えてきて、とても嬉しいです!
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