外国人になるということ、孤独を味わうということ

イギリスに来てからの日々は、ずっと孤独との戦いだったとも言えます。

5年前に夢を膨らませて渡英した日、そんなことは一切考えてなかった。夢を本気で追うというワクワク感と、海外進学という希望と、そういえば、実家から出れるのも嬉しかった。

まさか2か月後から、孤独を背負って生きることになるとは思ってもいませんでした。

 

なぜこんなことを書き出したかというと、先日あったイチロー選手の引退会見を聞いて。

孤独感をずっと感じながらプレーしていたのか?

現時点では、全くないですね。

アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと。
アメリカでは僕は外国人ですが。このことは…外国人になったことで、人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れてきましたね。
この体験というのは…本を読んだり、情報を取ることはできたりしたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。

実は生中継でも録画でもちゃんと見てなくて、周りも盛り上がってたからスルーするつもりでいたんやけど。

最後のこの部分がTwitterに流れてきて、見てしまって。

 

イチロー選手のような偉大な方と比べようとか、自分も同じだとか、そんなことが言いたいわけじゃない。だけど、どうしても書いておきたくなったのです。イギリスで感じてきた、外国人でしかいられなかったことについて。

そうして感じた、孤独について。希望について。

 

 

どうあがいたって、イギリスでは僕は外国人

夢を追ってきてました。

F1のエンジニアになりたくて、その中心地であるという理由だけでイギリスの大学に進学。さっき渡英2か月後から孤独を感じだしたって書いたけれど、当初は別に大して心配してませんでした。

「英語力がないんや。よーし、英語頑張ろ」

 

国籍の話をするのが好きになれない。

日本人だからとか、イギリス人だからとか、一々うるさいんじゃと。僕は僕で、あなたはあなた。国籍を持ち出すな。そう考えてイギリスでも生きていたし、自分自身でも望んでました。国籍なんて関係ない。僕は僕だと。
でも英語がなってないなら、しょうがないよね。うん、それは僕が悪かった。もっと話せるようになろう。

 

あるいは、途中から英語はそこまで重要じゃないと感じることもありました。

結果を示せばいい。イギリスでも僕が何かできることがあって、彼らと同レベル、もしくはそれ以上できるって。そして役に立つと思ってもらえれば、実力を認めてもらえれば、イギリス人達も受け入れてくれる。

そう信じて、必死に過ごしてきました。

 

そうして周りは徐々に認めてくれるようになったし、周りから僕に話しかけてくれるようにもなりました。勉強とかで頼ってくれることも増えた。

それになにより、イギリスのF1チームで1年インターンだってした。周りのイギリス人でもかなり難しいと感じる、2年生終わりでの1年インターン。結果であれば、一つ一つ示してきた。そして周りも分かってくれていた。

 

でも、僕はいつまでも日本人でした。

 

周りはずっと、僕と日本を結び付けて捉えていました。

普段は別に、普通にディスカッションしてる。仕事だって普通にこなしてきたはず。別に不平等だとか、僕が日本人だから不平に扱ってるとか、そんなことは感じませんでした。もう少し正確に言うと、周りのある程度深く関わってる人は、別に人種差別的なことはしてません。(道端ですれ違った人が人種差別的行為をしても、そんなのは気にならない。どうでもいいもん。)

ただ、どんなに仲の良い人でも、明らかに何か、埋め切れない溝みたいなものを感じていました。

 

F1チームでインターンしてた時、F1日本GPが来ると周りが話題をふってくれたりする。何かについて話していると、日本ではどうなの? と尋ねられたりする。

向こうは僕に対して気兼ねなく話してただけだと思います。でも、日本の話題を振られる度に、「ああ、僕は結局日本人なんやな」と思うことをやめられませんでした。

 

彼らには20年、30年、あるいはそれ以上のイギリスでの生活があって、僕にはその時、たかだか4年ほどしかなかった。幼少期の多感な時期も、全く別の文化の中で育ってきた。

確かに結果を出せば周りは認めてくれるし、応援だってしてくれるようにもなります。仲間にもいれてくれる。それはとても嬉しかったし、仲良くなれた! と感じる。

それでも、何か溝があるように感じました。マリアナ海溝のように深く、暗く。

 

孤独だけが原因ではないけど、順調に行ってるように見えた日々の中で、突然鬱になってしまったこともありました。

だから、聞くだけで涙が出そうになるのです。

外国人になったことで、人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れてきましたね。

 

 

それでも孤独を悪いと言わないイチロー選手

ご存じの方もいるかと思いますが、イチロー選手はこの後、孤独についてもう少し話しています。最初に書いたところと重なる部分もありますが…:

この体験というのは…本を読んだり、情報を取ることはできたりしたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。

孤独を感じて苦しんだことは、多々ありました。ありましたけど、その体験は、未来の自分にとって大きな支えになるんだろうと、今は思います。

だから、辛いこと、しんどいことから逃げたいと思うのは当然のことなんですけど、でも、エネルギーのある元気な時にそれに立ち向かっていく。そのことは、すごく人として重要なことなんじゃないかなって感じています。

海外での孤独について、イチロー選手がこう話した意味は大きいと思っています。

海外に行くというのは、どうしても華やかでかっこよく映ってしまう。期待に胸が膨らんでしまう。

そんな人達の期待に膨らんだ風船をしぼませたくはないから、面と向かってあまり言えない。けれど、少なくとも僕は、海外で外国人として生きることで、途方もない孤独を感じてきました。

僕だけだと思ってた。
僕が弱いからダメなんだと思ってた。

だからびっくりした。あのイチロー選手も、「孤独を感じて苦しんだことは、多々ありました」と話したことに。しかも夢を追って孤高の存在になって、とかじゃなくて、「外国人として生きることで」。

 

正直、孤独を感じようとも僕は言いたくないし、できるなら感じてほしくない。夢や留学についてブログを書いてることもあって、夢描いて希望に満ち溢れてる人や渡英前の人から相談を受けることもある。そこで変に孤独だとか、意識してほしくもない。

でももし、もし仮に海外生活で途方もない孤独を感じることがあれば、思い出してほしいです。

それは偉大な人でも、僕みたいなへなちょこでも、感じえるものなのだと。

 

イチロー選手は会見で、孤独を否定的には表現しませんでした。体験しないと自分の中から感じられないもの。

「その体験は、未来の自分にとって大きな支えになるんだろう」と言う。

そしてきっぱりと言い切った。

「現時点では、(孤独感は)全くないですね。」

 

 

わたぽんのまとめ的なにか

もしかしたらまだ、僕には時間や努力が足りなかっただけかもしれません。孤独感を感じずにイギリスでも生きられるようになるには、結論を出すのが少し早かった。それもまた、正だと思ってます。

もっと実力が必要だったのかもしれません。文化等の理解不足もあるでしょう。そういうのはきっと、突き抜けてみないと分からない。

 

一つアドバイスらしいものを僕から足せるとしたら、「自分の周りの人との関係を大切にしよう」ということ。一人では生きていけない。当たり前かもやけど。

 

最後に、厚かましくもイチロー選手へ。ひとまずは今までお疲れ様でした。メジャー記録の更新。WBC決勝で見せた勝ち越しヒット。何度も鳥肌が立ちました。本当にありがとう。

 

以上、わたぽんでした。ほなね!



わたぽんの簡単な自己紹介

わたぽん(@wataponf1_uk)
高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻中。未熟で失敗ばかりするも、その度に這い上がってきた。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでのインターンも獲得。自分と未来を信じて、夢は叶えられると証明したい。詳しいプロフィールはこちら

ブログ「わたぽんWorld」について

僕、わたぽんの「F1のエンジニアになる」という夢を叶える道を綴るブログ。2014年に運営開始。夢に近づけば近づくほど、更新頻度が減っていきます。
テーマは夢とイギリス留学。僕の生き方が励みになると言っていただくことが増えてきて、とても嬉しいです!

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Comment

    • Strayed Piggy Sheep
    • March 24th, 2019

    私も、現在将来の夢への気持ちが揺らいでおり、共感しすぎたためコメントさせて頂きます。

    初期からずっと勝手に拝見させて頂いております。私自身も海外大学に進学しており、孤独さ、鬱、日本社会への違和感、人生における迷路等俗にいう一般的な困難を身を以て体験したつもりです。あれですね。程々に生きてきたいですね。わたぽんさんがどのん道に行こうとも、陰ながら、誠に勝手ながら、応援しております。無理せず。

    • Strayed Piggy Sheepさん、
      コメントありがとうございます。もうかれこれ5年近くなりますが、読み続けていただけていると聞き光栄です!
      色々な経験をされたんですね。程々に生きていきたい…とおっしゃる気持ちも分かります。辛いより幸せに生きたいですもんね。笑
      応援していただけると励みになります。無理しすぎず楽しんでいきます。Piggy Sheepさんも無理なさらずに。ヒツジ仲間です^^、

    • Miko Beatty
    • March 29th, 2019

    グループのサイズが大きくなればなるほど、その輪の中にいる人は孤独を強く感じるんじゃないかな、って思います。それでも人というのはいつもどこかにbelong していたい。私は周りに東洋人のいない郊外にある、25人ほどが働く美容室で14年間働いていました。同僚は私を自宅へ呼んでくれたり、お出かけする時にはいつでも声をかけてくれ、従業員控室ではいつも楽しく話しかけてくれて、仲間なんだなあ〜、とずっと思っていました。が、ある時、1番仲の良かった3人の同僚が寄ってたかって私を指さして『あんたは東洋人なんだから、自分のbelongするところへ帰ったほうが幸せになるわよ』と罵るんです。自分で言うのはおこがましいのですが、20人いる美容師の中で私はトップ3の売り上げをする美容師だったので、『移民のくせに人気があって憎らしい』と言うことでいじめにかかったようです(トップ1と2はウクレイナ人とポルトガル人、残りは全員アメリカ人)。25人もいれば意地悪なのもたまにいて、パールハーバー(真珠湾攻撃)の記念日には『パールハーバーの屈辱を忘れてはいけないわ』と私の顔を見ながらその話をしたり、ベトナム戦争(私は日本人なのに、やたらにベトナム戦争と朝鮮戦争の話をしたがる)の話題を持ち出して私の顔を見たり。東洋人のことならなんでも私と結びつくようです(笑) いつも仲良くしてもらっていたのですが、いつもどこか完全に馴染みきれない思いはありました。『溝』ですね。
    寄ってたかって罵られた一件から1年後に、私は独立して自分のヘアスタジオをオープンしました。みんなまさか私が辞めるとは思っていなかったようなのでかなりビビってましたが、どんなに謝られても人種差別をされた傷は治らないです。信用がズタズタです。信用というのは長年かけて築きあげるものですが、一瞬で砕かれて、また一生をかけて修正するものですが、一旦ヒビの入ったグラスでは元のように安心して水を飲むことはできないのといっしょで、もう何を言われてもこの人たちは信用できなくなり、結局その美容室をやめたのです。今は私のスタジオの1ルームを間貸しをしてくれているもう一人の美容師と2人で切り盛りしてるので、『グループの輪』はかなり小さいですが、それでもやっぱり何かに属したいと言う人間の本能のようなものを感じて、彼女が一緒に働いてくれることに心から感謝しています。こんな小さな私の「輪」の中でさえこれだけのジェラシーやいじめや人種差別があるのですから、イチロー選手の属した野球界、チームの中できっと言葉にするのも辛い体験がたくさんあったと思います。お金が絡むとさらにひどく、金額が大きくなればなるほど醜いジェラシーが発生しますね。 
    私はアメリカ国籍を選んだので、もう日本の国籍はなく、日本へ行くときは外国人です。アメリカでもなんとなく異国人、日本へ行っても外国人です。そしてわたぽんさんのおっしゃるように、『溝』は確かに感じますね、いつも。それは多分、私たしはもう一つの文化を知っているからなのではないかなあ、って思います。
    イチロー選手は本当によく頑張られたと思います。日本人として彼を心から誇りに思います。

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プロフィール

わたぽん(@wataponf1_uk)

高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでの1年インターンも獲得。現在は卒業し、日本でF1から離れ生活中。 詳しいプロフィールはこちら


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