F1エンジニアを目指すならイギリスへ行くべき8つの理由
「F1を目指すならイギリスへ行くといい。」
というのはよく聞く文言で、今までもF1関係の本や雑誌では、度々言及されてきたことです。僕もそのレポート的なものを、イギリス1年目を終えた時に書きました。
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F1でエンジニアやメカニックとして働きたいなら、イギリスが一番。僕がF1を目指したいと思った6~7年前にも、言われていました。僕にはそれがほんとかどうか分からず、また、5年後、10年後も同じ状況なのか不安でした。
そして4年間イギリスで生活して、F1目指してきた今、言えることがあります。
「F1を目指すならイギリスへ来るといい。」
だって本当にそうなんですもん。僕はイギリスに来て、実感し続けています。僕がF1ならイギリスへ来いと言う理由を、まとめました。
イギリスが最適と言われる理由
F1を目指すのにイギリスが最適だと言われ続けるのには、理由があります。項目ごとに挙げてみましょう。
最高の情報源は英メディア
F1に関する一番の情報源は、イギリスのメディアです。
最も有名なのは、イギリスのモータースポーツ雑誌:Autosport誌。
ドイツやイタリアのメディアが言っても「飛ばし記事だ!」と揶揄されるのに対し、Autosport誌がその情報を発すれば、「本当らしいぞ」とみんなが思う。いわば、Autosport誌がメディアでは最も権威があり、最大で最高の情報源となっているのです。
日本にもオートスポーツ誌があるけれど、これは英Autosport誌とは違うので注意。
その中で最も重要な要素は、F1関連の最新情報は英語記事が最も早く、深い、ということ。
情報量はF1を目指す上で最も重要な要素。情報なきもの何もできず。それを最も早く、深く、ニュアンスをそのままに吸収できるのが英語の記事です。
日本だと英語翻訳、あるいはF1でたった数人の日本人記者の書く記事のみ。そりゃー情報量が違います。
僕が過去に学校のイギリス研修に来た時に、パッと手にとったAutosport誌に載っていたのは、F1界で最も有名なレースカーデザイナー:エイドリアン・ニューウェイ氏のロングインタビュー。その中では彼のルーツや、これからF1を目指す人へのアドバイスも。日本では当時まだそんな記事見たことなかったし、英語ができると、イギリスにいると、こんなに手軽にたくさん情報を得られるんや!と一人感激していました。
今なら彼の本が出されてぐらいだし、日本でも簡単に手に入れられますけどね。笑
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情報というのは雑誌を含むメディアだけに関わらず、友達関係等においても言えること(後に書きます)。
今ではネットが普及し、ニュースのほとんどは世界どこでも読めるようになりました。それでも、メディアが充実したイギリスにいるというのは、それだけで利点になります。
F1チームの多くはイギリス拠点
よく言われることですが、F1チームの多くはイギリスに拠点をおきます。
2018年現在でも、イギリスに拠点がないのは10チーム中2チームだけ。
フェラーリはイタリア、ザウバーはスイスですが、他のチームはみんな、何かしらの形でイギリスに拠点を持っています。ホンダだってエンジン提供という形だけとはいえ、イギリスのミルトンキーンズという場所に拠点があります。
そうすると何が違うかというと、F1チームへの就職機会が段違いで増えるということ。1000人以上がイギリスのどこかのF1チームで働いているのですから、門戸が広ければ入りこみやすいのは当然です。
これは上記した、情報量という点でも違います。
「オックスフォードのパブで飲んでいたら、隣がF1エンジニアだった」という話を以前見かけましたが、はい、F1チームでインターン中オックスフォードで飲みました。なのでそれは本当です。笑
そこら辺にF1関係者がいるのですから、友達の親戚が実はF1で…ということも普通にある。だからもっとリアルで、臨場感ある情報も出回りやすい。
これが日本だと、F1ができる可能性があるホンダなんかに就職して、たまたまF1に参戦するとなった時に、運良くF1開発部門に選ばれたらF1ができるという…。他に日本でF1をやる方法なんてないですからね。もしくは海外に出なきゃいけない。
じゃあ日本から直接イギリスのチームに就職すればいいやって思う人もいるかもしれませんが、まあそんなに話は単純ではありません。
就労ビザがいる
イギリスで働くには、当たり前ですがイギリスのビザが必要です。
これが非常に曲者で、なんならイギリスのビザ情報を取り扱っているサイトを見ると、軽いめまいがするほど。僕はまだ学生ビザだけだけど、良い思い出はありません。
ある意味、ネットの普及で情報格差が少なくなって、英語学習も容易にできるようになった今、次なる大きな壁はビザだと言えるほどです。
例えば就労ビザを取りたいと仮定しましょう。
その場合、最も楽な方法が学生ビザからの切り替え。つまりイギリスの大学を卒業し、そこから直接イギリスのF1チームで働くというものです。
しかしそれ以外だと、例えばビザ取得のための要件の一つである必要最低賃金が高かったり(毎年のように必要最低賃金は上がる)、手続きがより面倒になります。(賃金に関する情報例↓)
チーム側としても、得体の知れない国の大学から来た英語もまともじゃない一個人なんて、ビザのリスクを背負って取るなんてしません。イギリスにいたって中々取ってくれないのに。だから日本の大学を出てイギリスのF1チームに直接入るというのは、そもそも無理な話と考えるのが妥当。誰も不可能なんて教えてくれないんですけどね。
イギリスの大学ではF1について学べる…は本当?
本当です。
僕がいるサウサンプトン大学の航空工学科では、1年時にリアウィングの簡易シミュレーションを体験し、二年時には就職面接でも聞かれるような空気力学の基礎を学びます。3年や4年生では研究があり、そこでF1に関連した研究テーマにする人もいます。
僕はちょうど次に3年生になるので、教授陣から個人研究のテーマリスト発表がありました。その中には、F1を模したフロントウィング開発やレース向けの高性能エギゾーストの開発等、レース関連の研究テーマも。興奮します。
人によっては、F1チームと提携して、大学で研究を行う者も。大学院生にちらほら見かけます。
これはもちろん大学によりますが、サウサンプトン大学ではこのようなF1との関わりが、昔から慣習のように行われています。
また、Formula Studentで活動していた時は、F1チームで働く先輩なんかが遊びに来てくれたりして、様々なアドバイスももらいました。実際、F1チームでインターンをして思うことは、大学で学んだことが基礎となりそのまま活かせるし、Formula Studentでやっていたことはたとえ幼稚園レベルだったとはいえ、流れとしてはF1チームでやっていることとかけ離れていない。そう実感しました。
実際、イギリスの企業では新卒だろうがなんだろうが、即戦力として見込まれています。そこに何か月にも及ぶ社員研修や、できるようになるまで1年も待ってくれるような企業はありません。大学・大学院では、そのための準備をしている、という側面もあるのです。
また、情報という点でもこれまた有利に働くのがイギリスの大学。これは特に、良い大学で。
例えばいくつかのF1チームが就職説明会のために大学に訪れるし、卒業生や先輩にも、F1関係者は多い。そうなると、Formula Studentのように然るべき場にいると、F1関連の情報はいくらでも入ってきます。中にはネットでは絶対出回らないような情報や、友達や先輩のリアルな最新情報まで。
日本にいては知りえないことばかりだったし、だから来た方が有利に働くと言えます。
イギリス(ヨーロッパ)でのコミュニケーションを会得する
コミュニケーションも重要なポイント。
これは英語ができればいい、という意味ではありません。
「英語が喋れる=うまくやっていける」なら、今すぐ日本語なんて捨てて英語一本にしますよ。でも実際は、お互い日本語が喋れても仲良くなれるとは限らないし、うまくやっていける保証なんてどこにもない。英語だって、喋れたらいいってわけじゃありません。
コミュニケーション。
もしかしたらそれは、英語の出来はあまり深く関係ないのかもしれません。僕は英語がヘタクソでもコミュニケーションがうまく、どんどん周りを引き込んでいる人を何人も知っていますし、その逆も知ってます。
例えばイギリスの場合、「This is nice. = 良いね。」ではありません。もしかしたら相手は、皮肉で言ってるだけかもしれにし、バカにしてる可能性だってあります。いわゆる、”Sarcasm”と呼ばれるもの。バカにされてるのに、わーいオトモダチーなんて言って対等にやってけるはずがありません。
僕は来てからその様なことを嫌というほど味わったし、おかげで精神的に参ったときもありました。
でも面白いことに、イギリスで過ごしている内にだんだん慣れてきたり、むしろsarcasmを楽しんだりもするように。こういうのって、実際その場で過ごさないと、会得しにくいものです。
F1はチームスポーツ。
全員が全員、イギリス人のように皮肉を言い散らす必要もなければ、イタリア人のように感情的になる必要はありません。ですが、相手を受け入れ、スムーズに物事を進めるには、このようなコミュニケーションの慣れというのは必須でしょう。
下部カテゴリーチームはF1直結?
学生に限らず、既に社会人だけどこれからF1チームで働きたいという人もいるでしょう。それなら、下部カテゴリーにまずは入りこむという手もあります。
例えばワーキングホリデービザをゲットできれば、最大2年間イギリスに滞在できます。それだけあれば、(仕事さえ確保すれば、)実力を証明するのには十分、かもしれません。相手に存在を知ってもらえますし、その後の就労ビザに繋げることも視野に入れることができます。
そして下部カテゴリーとはいえ、特にイギリスでは元F1チームメンバーがいたり、F1との深いコネクションを持つ人が多数いるのも事実。実力を認めてもらえれば、F1への道が直接開ける可能性だってあります。
これが日本だと、F1と太いパイプを持つ人は限定的だし、直接イギリスでの就職に結びつくかと言えば、難しいところ。(ないとは言わないけど。)
ヨーロッパで働いていればチャンスが増える?
あああああともう一つ!
これは聞いた話なんですが、イギリスを含め、ヨーロッパで働いていた方が、F1チームへの就職機会が増えるというもの。
同じ職種でも、日本の企業で日本で働いているのと、ヨーロッパの国際的な会社でヨーロッパで仕事をしているのとでは、どうも受け取られ方が違うということです。
これは先ほど挙げた、チームスポーツというものも関わっているでしょう。
F1チームとはいえ、働いている人全員がイギリス人ではありません。イタリア人がいて、スペイン人がいて、もちろん日本人エンジニアもいれば、中国から来たエンジニアだっています。そしてなんと言ったって、世界中を転戦してレースしている。
だから国際的なバックグラウンドというのは、ポジティブ要素として見てもらえます。
また、ヨーロッパで働いているというだけでも、心理的近さを感じている…のかもしれません。もしイギリスに縁がなければ、一度他のヨーロッパの国に渡るというのも、一つの手かもしれません。
F1を支える文化がある
そして長い要素解説の最後に付け加えたいのが、イギリスにはF1を支える文化があるということ。
初めてイギリスに来た時に、ヒースロー空港でエスカレーターから見えるどでかい広告では、ルイス・ハミルトン選手がモデルをしていました。彼はイギリスを代表するF1ドライバー。他にもイギリスに支店が多々あるサンタンデール銀行も、モデルはイギリス人ドライバーのジェンソン・バトン選手。これは2018年5月現在でも、ロンドン地下鉄の広告で眺めることができます。
都市部の無料新聞なんかを開けば、スポーツ欄にはちゃんと先週末のF1の結果が大きな写真と共に載っている。BBCニュースをつければ、テロップにF1の結果が流れたりする。パブに行くと、(サッカー好きに占領されてなければ)F1が見れる。イギリスって、こんな国。
とある中学ではF1を題材にして数学の勉強をしていたし、現地の高校生と仲良くなった時、「F1好き!見てる!」という人がたくさんいました。日本では学年に一人いるかな…ぐらいだったのに。
家を借りようと大家さんと話していても、
「一番好きなドライバーは?」
「親戚にF1チームで働いてる人いるよ。」
なんて話が普通にできる。ファンがいて、アンチがいる。
友達がレース好きだと、誕生日パーティーにみんなでカート行こうぜ!なんてことにもなる。うまい人も下手な人もごちゃまぜで。
今では一つの産業として成り立ってしまっている、イギリスのモータースポーツとそれを取り巻く文化。それはすなわち、チャンスが増える場所とも言えます。
わたぽんのまとめ的なにか
世界中には他にも国はありますし、何もイギリスに…とも思うかもしれません。が、1960年代~2018年の間、この国が最大のモータースポーツ国家として存在してきたのは事実。
今後、電気自動車化を推し進めるドイツメーカーの動きや、アメリカ企業に買収されたF1等、イギリスがずっと最適な国であるかは分かりません。が、一つ言えること。それは、僕が最初に調べた6年前にも、似たようなことが言えたこと。
だから僕は「F1を目指すならイギリスへ行くべき」と何度でも言います。
以上、わたぽんでした。ほなね!
わたぽんの簡単な自己紹介
わたぽん(@wataponf1_uk)
高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻中。未熟で失敗ばかりするも、その度に這い上がってきた。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでのインターンも獲得。自分と未来を信じて、夢は叶えられると証明したい。詳しいプロフィールはこちら
ブログ「わたぽんWorld」について
僕、わたぽんの「F1のエンジニアになる」という夢を叶える道を綴るブログ。2014年に運営開始。夢に近づけば近づくほど、更新頻度が減っていきます。
テーマは夢とイギリス留学。僕の生き方が励みになると言っていただくことが増えてきて、とても嬉しいです!
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