将来の夢なんてずっとファンタジーであれば良かったのに
こんにちは、わたぽんです。
夢(Dream)という言葉を聞いた時、あなたはどのようなものを想像しますか?実現可能な夢?それとも壮大で到底叶いそうにないもの?好きな人と結ばれること?なりたい職業に就くこと?
同じ言葉でも、そこから思い描くものは人それぞれ違うでしょう。
このブログで夢という言葉を使う時、それはF1の世界でチームの一員として、レースで勝つために働くことを指してきました。それは自分がどうしても実現したいものであり、同時に憧れの境地のようなものでもありました。
しかし夢を追いかける過程において、叶えていく道のりの中で、その見方は180度変わりました。
今、僕はポツリとつぶやく。
「夢がただのファンタジーであり続けることができたならば、どれだけ気楽やったんやろう」と。
夢という名のファンタジー
7年前、F1を目指し始めた時、僕の頭に描かれていた夢は、憧れであり、まだどこかふわふわしたものでした。難しいことは分からないけど、僕はこれで幸せになれる。これこそが求める桃源郷。ワクワクで溢れていたし、夢について考えることは楽しいことでしかありませんでした。
いわば、ファンタジー。
ありもしない幻想も、もしかしたらあったのかもしれません。自分では現実を見ていたつもりだけど、感覚としてはそんなにハッキリしたものではない。まだどこか遠い話でした。
ファンタジーは楽しい。
別にこれは、F1という夢に限った話ではありませんでした。
例えばこのブログもそう。僕はブログを通して、自分の溢れんばかりの楽しい側面を描き出して、一つのファンタジーとして世の中に残すつもりで始めました。もちろん、そこから収入だって十分量入るはずだった。
遠距離恋愛になった僕の初めての恋人とは、そのまま結婚できると信じていた。気持ちが繋がって付き合いだせば、どんなことがあっても別れるはずなどないと疑わなかった。
ファンタジーの世界はどこまでも幸せで、希望に満ちた、そんな世界。
難しいことを考えなくてもいいし、気楽。それこそ夢で溢れている。夢心地なんです。ファンタジーの世界では、終わりはいつもハッピーエンド。僕はそんな世界を、本気で信じてきました。
「ずっとファンタジーであれば…」
あるいはそれは、いつまでも青春を味わいたいと思う高校生や、楽しい恋人ごっこをしていたい大学生と似たようなものなのかもしれません。それでも僕はファンタジーを、本気で信じていた。漫画の世界を、自分に当てはめていた。
ファンタジーは完全な世界ではなかった
果たして、そんなファンタジーは4年と3ヵ月が経った時に、崩壊しだしました。僕は崩れていく音を耳にしながら、最も近い場所からその様子を眺めていました。いや、眺めることしかできなかった。僕にはそれ以外、許されていなかった。ただ、4年と3ヵ月かけて築き上げた世界が崩れていくのに、何も手をつけることができなかった。
半年かけて、信じてきた世界は廃墟になりました。
荒廃した世界で立ちすくむ。今まではなんだったのか。「放心」とはこのことを言うのでしょうか。
鬱になって、何もかもが真っ暗になったあの時。
夢を追っているはずが、辛さしかなかった時。
永遠に別れるはずがないと思っていた恋人と、お互い好きだと言いながら別れた時。
ひと時に訪れたリアルの嵐に、僕の人生観は大きく変わりました。
本当に、ずっとファンタジーであれば良いのにと思いました。
僕はただ夢を見ただけなのに、それがゆえになぜ苦しめられるのか。
廃墟は僕に、現実しか突きつけませんでした。
それでも僕は、歩むことをやめませんでした。
それはファンタジーを信じてきた当時の僕とは、全く違う考えによってでした。つまり、飲み込まれたくないという一心でした。真っ暗な現実の世界であったとしても、それを完全に認めてしまっては、僕もその闇に飲み込まれてしまうと。僕はファンタジーを生きることができなかった。でも、闇に飲み込まれるのは嫌や。嫌や!!!!
まるで宗教にとりつかれたような考えだったと思います。そう言われても、仕方がない。それほどに、救済を欲していました。それが唯一、暗い世界で生き残る方法だと思いました。だから、夢というものを追いかけ続けた。何かの教えをもらえるのではないかと信じて。信者が教祖の教えを必死で守るのと同じように。
それでもファンタジーじゃないと現実を突きつけられてから、僕は理想の99%を捨てました。結局は現実を見なきゃいけないと思い、99%はドブに葬り去られました。そして残った1%。それがF1であり、夢であり、つまりある種の信仰でした。
捨てた理由。それはただただリソースがなかったからです。僕に全てを追い続ける気力も体力も、当時はありませんでした。でも暗闇に完全に飲み込まれたなかったから、最も重要な部分だけを残した、とでも言うのでしょうか。
夢というのは、なんと残酷なのでしょうか。
人生はファンタジーではないんやな、と実感した時です。
ただその後、暗い世界には段々と光が差し込んできました。
夢の実現が現実味を帯びてきたのです。それにより、僕は幾分楽になっていきました。1%の理想を追い求めることによって、結果的に当初描いていた理想の数十パーセントが実現したのです。その割合は、日々高まっていきました。F1チームでインターンを始めてからなんかは、自分の世界に光が差し込んでくるのを実感できたほどです。
清々しい朝、キラッキラな太陽光を浴びながら、朝露に濡れた牧草の横を車で駆け抜けてオフィスへと向かう。あるいは仕事中にふと思う。ああ、僕は夢見てた仕事を、今してるんやって。
その世界はファンタジーなのか?
残念ながら、答えはNoでした。
リアリティーとファンタジーの関係
あるいは僕は、あまりにも知りすぎたのかもしれません。憧れであった仕事を、例えインターンという立場ではあってもしている。そんな夢のような状況の中でも、稲光のように轟いているのです。暗く辛い、地下を歩いていた時の記憶が。その記憶が消えることはない。忘れたと思っても、心のどこかに未だ残っている。
言葉では「楽しい」「嬉しい」と言うし、実際楽しくて嬉しい時間でした。でもその「嬉しい」が意味するものは、ファンタジーだけを見ていた7年前に想定していた「嬉しい」とは、全然違うものでした。
なんだか、哀しかったです。
僕はただ、バカなだけだったのかもしれません。こんなことなら、ファンタジーのままで終わらせた方が良かったのかもしれません。今夢を描いている人がいたら、こっそりその行く先を邪魔してしまいたいぐらい。だって楽しい世界が崩れ去る音を、もう誰にも聞いてほしくないから。その様子を見てほしくないから。
しかし、です。
僕は未だに、夢を描き続けています。
それも過去に描いていた夢と同じように、端から見れば阿保だと言われそうな、そんな夢を。自分でもびっくりしました。なんで僕はまた夢を見ているのかと。もう学んだやん。また辛い思いをしちゃうよ?
それでも夢は縮まることを知りませんでした。
僕の根底で、勝手に作り上げられていくのです。
呆れた……。
そう言いたいところでしたが、違います。実は僕は、とても嬉しいです。また夢を描くことができて。それも暗闇から逃れるための宗教のようなものではなくて、ただただ純粋に、夢を描けていることを。
しかしこれは、7年前に描いた夢の形とは違う。これは完全なるファンタジーではありません。それは僕が、リアルを経験したからです。いくら僕が阿保でバカで仕方のない人だとしても、さすがに同じようなファンタジーは描けない。でも夢である以上、そこにはファンタジー要素があります。
ノンフィクション・ファンタジー
「ノンフィクション・ファンタジー」
シャワーを浴びながら、僕は呟きました。そう、これはファンタジーでありつつも、あくまで現実に基づいたもの。ファンタジーでありつつも、幻想の世界で完結していない。しかしやはり、ファンタジーでもある。夢がある。ワクワクするし、幸せが付随しています。
それが今、頭の中を渦巻いている夢の形。
同じ夢でも、全く趣の異なるものです。
同じ夢でも、こうも違うものなのか。
現実を知ったことを、一時は悔やんでいました。
ずっとファンタジーであればと、本気で思っていました。
そうすれば、暗い影を背負いこむ必要はなかったはずなのに、と。
でも、それは違うのかもしれません。
今だから言えます。僕は現実を知る必要があったのだと。現実を垣間見たからこそ、その上に本当の夢を描けるのだと。だから今夢を持っている人に伝えたいんです。夢を追い続けようと。その先には暗い世界も存在しているかもしれない。楽しいことばかりではないのかもしれない。それでも、夢を信じていれば、それが新たな世界に導いてくれるはずだと。
現実を知ったから、どうしたと言うんですか。現実を知ったからこそ、ファンタジーをリアリティーにできるんじゃないですか?
以上、わたぽんでした。ほなね!
わたぽんの簡単な自己紹介
わたぽん(@wataponf1_uk)
高校生の時に「F1マシンをデザインしたい!」という夢を抱き、F1の中心地:イギリスへ。サウサンプトン大学で宇宙航空工学を専攻中。未熟で失敗ばかりするも、その度に這い上がってきた。そして渡英4年目には、念願であったF1チームでのインターンも獲得。自分と未来を信じて、夢は叶えられると証明したい。詳しいプロフィールはこちら
ブログ「わたぽんWorld」について
僕、わたぽんの「F1のエンジニアになる」という夢を叶える道を綴るブログ。2014年に運営開始。夢に近づけば近づくほど、更新頻度が減っていきます。
テーマは夢とイギリス留学。僕の生き方が励みになると言っていただくことが増えてきて、とても嬉しいです!
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